最近目まぐるしい成長を遂げているAI(人工知能)ですが、中でもChatGPTを知らない人はもはやいないのではないでしょうか。実際にAIツールを活用し、業務の効率化を図っている人も増えています。AIに仕事が奪われて、今ある職業の半分がなくなるという声も聞かれる今、ファッション業界でもAIを取り入れなければ仕事ができない時代が来るかもしれません。
こちらの記事では、ファッション業界ではどんなAI活用が進んでいるのか、AIファッションデザイナーやAIを活用したファッション業界向けのツールなどをご紹介していきますので、時代に取り残されないようぜひ最後までご覧ください。
目次
AIとは、人間の知能をコンピューターや機械で作り出そうとする試みで、人工知能といわれるものです。インターネットやパソコン、スマートフォンなどから集められた膨大なデータをもとに、自分で学習して成長します。
AIは、入力された文章や音声を認識し、自然言語処理などの技術を使って人間とコミュニケーションをとることができます。会話を通して情報収集の手助けをしたり、コンサルティングを提供したり、データを生成したりと活躍は多岐にわたります。AIは、今や私たちの生活や仕事に欠かせない存在になっており、医療や教育、芸術、ビジネスなどのさまざまな分野で利用されています。
たくさんのAIが存在する中で、一番ファッションデザインと相性がよいのが、生成系AI(ジェネレーティブAI)。学習済みのデータを活用して新たなデータを生み出すAIで、文書や画像、音声、動画など、さまざまなものを作ることができます。
ChatGPTやGoogle社のBard、Microsoft社のCopilotなどの文章生成系AIは、本物の人間を相手にチャットしているかのように、大変スムーズなやり取りをしながら文章を生成できます。翻訳や要約もしてくれる大変便利な存在です。
Stable DiffusionやMidjourney、DALL・E2などの画像生成系AIは、「プロンプト」と呼ばれる、AIがユーザーの要求や問いに対して適切な応答や結果を生成するための元となるテキストを入力することで、そこから連想される画像を自動的に生成します。
Runway Gen-2やKaiberなどの動画生成系AIは「プロンプト」から連想される動画を生成したり、静止画から動画を生成したりできるAIです。
音読さん、Murf.AIなどの音声生成AIでは、テキスト入力したものを、AIが学習した音声で読み上げることができます。最近では動画のナレーションにAIを使うケースも増えてきました。
これ以外にも、プログラミングコードを書いてくれたり、翻訳をしてくれたりと、AIはいたるところで活用されています。AIを活用することで、一からものを作る必要がなくなり、専門的な知識がなくてもクリエイティブな作業ができるようになってきました。そして、上記のような一般的な生成AIだけではなく、それぞれの業界に特化したAIも多く誕生してきています。
では、ファッションデザイン向けのAIにはどのようなものがあるか紹介していきます。
もちろん、先ほど紹介したStable DiffusionやMidjourneyといった画像生成AIでもうまくプロンプトを使って生成すれば、モデルがドレスをまとってランウェイを歩くファッションショーの画像を作り出すことができます。ただ、このプロンプトが曲者で、思い通りの画像を生成することが難しいため、すぐに生成をあきらめてしまう人も多いのではないでしょうか。そんな時は、ファッションデザインに特化した機能を持ったツールを使ってみてください。
Maison AI公式サイト(https://maisonai.io/)より
ファッションと、AIを始めとした最新テクノロジーをかけ合わせたサービス・プロダクトの開発に取り組む株式会社OpenFashionが2023年8月にベータ版の提供を開始した、ファッション業界に特化した文章・画像生成AIツールです。「AIエージェント機能」を使うと、AIにファッションデザイナーやパタンナー、そして人事や法務など特定の職種を設定することができるため、通常のテキスト生成AIよりも高い精度で回答を得られます。架空の担当者を作ってプロジェクトを組み、ファッション企画のサポートをしてもらえるのがポイントです。テキストから画像を生成する「画像ジェネレート」も新たに機能として追加され、企画資料のイメージ画像、ファッションデザイン画像、Webサイト、ブログ、メルマガ、Web広告などの素材画像を作り出すことができます。
The New Black公式サイト(https://thenewblack.ai/)より
The New Blackは、デザイナーやブランドがAIを使ってユニークで独創的なファッションデザインを生み出すことに特化したサービスです。プロンプトを使って画像を生成するだけではなく、カテゴリやスタイルなどを選んで生成していくことができるため初心者でも使いやすいのが特徴です。また、サイト内にコミュニティ機能があるので、自分のデザインをアップロードしたり、誰かが作成したデザインを元に2次創作したりと、他のデザイナーとのコミュニケーションも図れます。
Resleeve公式サイト(https://app.resleeve.ai/)より
プロンプトを打ち込み新しいデザインの画像生成をしたり、手持ちの画像の一部を変形してデザイン変更をしたり、手書きイラストのシルエットにプロンプトによる指示をすることで写真のようにリアルな製品イメージを作成したり、イメージボードからデザインを作成したりと、ファッションデザインに特化した機能が豊富にあります。
Adobe公式サイト(https://www.adobe.com/jp/products/firefly.html)より
さまざまな業界でデザイン制作に使われているPhotoshopは、ファッション業界でも多くの方が利用しているソフトではないでしょうか。最近ではFireflyというAIで簡単に画像生成したり、生成塗りつぶしの機能で存在しないものをAIが素早く作り出してくれたりと、多くのAI機能を搭載しています。
デザインソフトウェアAPEXFiz(https://www.shimaseiki.co.jp/product/design/software/)より
アパレル向けデザインソフトウェアのAPEXFiz®はファッションデザインに特化した多くの機能を搭載しているので、一般向けのデザインソフトよりも簡単に使うことができ、さらにAI機能も搭載されていてより使いやすくなっています。特に他のデザインソフトではできない、APEXFiz®のニットシミュレーション機能では、お好みのニット柄の写真に近い柄をAI機能で検索してニットライブラリーから探し、シミュレーションに使うことができます。その他にも、衣服の絵柄をAIで消して無地にし、違うデザインの柄を入れたり、切り抜きたい場所をAIで自動的に抜き取ったりとファッションデザインに役立つ機能が満載です。
画像生成AIで柄や画像を作成する場合は、プロンプトにより思い通りの画像ができたり、全くできなかったりと結果に波があり、何度もやり直さなければいけない場合もあるでしょう。APEXFiz®を使うことで、AIの良いところだけ取り入れて、その後の編集は専用機能で細かいところまで調整ができることがポイントです。
デザインソフトウェアAPEXFiz®について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
リアルなバーチャルサンプルはこれで決まり!企画から生産、ECへの活用まで幅広く役立つデザインソフトAPEXFiz®とは?
ファッション・アパレルの商品を企画する際、どんなソフトを使っていますか? CLO3D、Browzwear、Optitexをはじめ、おなじみAdobeなど、さまざまなソフトがありますよね。今回は、企画から生産、ECへの活用まで幅広く役立つデザインソフトAPEXFiz®をご紹介します。
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AI Fashion Week公式サイト(https://fashionweek.ai/)より
2023年4月に初めて、AIでのみデザインされた衣服でのファッションショーが開催されました。通常であれば、ランウェイを着飾ったモデルが歩くファッションショーが繰り広げられるファッションウィークですが、AIファッションウィークでは生成されたAI画像が会場に展示されている24のスクリーンで映し出されました。MidjourneyやStable Diffusionという画像生成系AIを使って作られた作品が、世界各国から350以上集まり、投票によって選ばれた約50のコレクションが展示されました。
第2回は2023年11月15日~20日までミラノで行われ、世界中からの投票が終了して、TOP20がインスタグラムで発表されています。
Open Fashion公式サイト(https://jp.open-fashion.com/)より
前章にて紹介した、Maison AIを手掛ける株式会社OpenFashionが定期的に開催している、生成AIを活用したファッションブランドを作るコンテストが「AI FASHION CHALLENGE」です。「レトロ&ヴィンテージファッション」「ノンデスクワーカー向けハイファッション×ワークウェア」などのテーマで定期的に募集があり、生成されたコレクションが投稿されると、一般の方のいいねや審査員の評価で順位が決まります。これまで9回のコンテストが開催され、2024年2月には第9回の「オリジナル柄で創るファッションデザイン」のテーマで募集された作品の審査中となっています。
RADIIWEBサイト(https://radii.co/article/an-ai-designer-just-won-runner-up-in-a-major-fashion-design-competition)より
2014年に上海を拠点に設立されたDeepBlue Technologyというスタートアップ企業は、服をデザインするAI「DeepVogue」を開発しています。中国服装協会と上海ファッション都市推進センターが共同で主催した「中国ファッションデザイン革新大会」にAI「DeepVogue」を使ってデザインした服で参加し、名だたるファッション名門学校を抑え2位の成績を上げました。
さて、ファッション業界向けのAIの機能や、現状どういった形でAIが浸透してきているかをご紹介してきましたが、実際にAIを活用して生まれたAIファッションデザインについてご紹介していきます。
モンクレールジーニアス公式サイト(https://trendland.com/moncler-genius-first-ai-campaign/)より
ダウンジャケットで有名なモンクレールは2023年の秋冬コレクションとして、AIでデザインしたモンクレールジーニアスのコレクションをロンドンファッションウィークにて発表しました。
Fashion Pressサイトエマリーエ記事(https://www.fashion-press.net/collections/11006)より
エマリーエ(EMarie)のエマ理永は、AIとコラボレーションした2019-20年秋冬コレクションを、2019年3月に東京大学生産技術研究所で発表しました。AIにエマ理永の過去のコレクションを学習させて、そこから生み出されたデザインをドレスに落とし込んで製作されています。
Revolve公式サイト(https://jp.revolve.com/women/?navsrc=logo)より
2023年4月にニューヨークで開催されたAIファッションウィークの上位入賞者の作品は、Revolveの手によって実際に商品化されました。受賞者である、ホセ・ソブラル氏、マティルデ・マリアーノ氏、そしてオペ・マジェク氏がAIでデザインした3つのコレクションが販売されています。
accelerando.Ai公式サイト(https://accelerando.ai/)より
前章で紹介した、「AIファッションチャレンジ」コンペにて選ばれたデザインは、AIを活用したファッションブランド「accelerando.Ai (アッチェレランドドットエーアイ)」より、メタバースプラットフォーム「ZEPETO(ゼペット)」にてアバターが実際に着用できるファッションアイテムとして販売されています。
これまでは、デザインにAIを活用している例を取り上げてきましたが、他にもAIを使ったファッション業界向けの機能がたくさんあります。活用事例を紹介していきます。
Heuritech公式サイト(https://www.heuritech.com/heuritech-suite/)より
パリを拠点とするファッションテクノロジー企業であるHeuritechが立ち上げた、トレンド予測のサービスが利用できるプラットフォームです。大量のファッション系画像をAIで分析しトレンド予測を行っており、ルイ・ヴィトン、クリスチャンディオール、モンクレールといった老舗ブランドも活用しています。
Fashion Recommend Bot公式サイト(https://kobedigitallabo.github.io/fashion-recommend-bot/)より
神戸デジタル・ラボ(KDL)が提供するファッションレコメンドボット(Fashion Recommend Bot)は、AIとチャットボットを活用して新しい顧客体験を提供しています。ユーザーが購入したことのある商品から好みを分析しておすすめ商品やコーディネートを紹介したり、ユーザー側が自身の好みを登録することでそれに合った商品を紹介したり、ニーズに合った商品を提案してくれます。
XZ公式サイト(https://xz-app.jp/)より
持っている洋服を登録すると、AIが服の着回しコーデを提案してくれるファッションアプリです。地域の天気や気候に合ったコーデを提案してくれたり、持っている服の着用回数や、コスパ、色などから分析して服の傾向を診断してくれたりと、自分では気づかない洋服の活用方法が見つかります。
VModel.AI公式サイト(https://vmodel.ai/jp)より
VModel.AI は、AI ファッションモデルを使ってECサイト用にも活用できる写真を作成できる、AI画像ジェネレーターです。モデルの肖像権を気にすることなく、モデル撮影コストを削減できます。人が製品を着ている写真を変更できるだけではなく、マネキンが製品を着ている画像も自然にAIモデルが着ている画像にできます。
日本電気株式会社(NEC)が開発し、大塚商会がアパレル向けのIoTツールとして提供している、アパレルの店舗における顧客の行動を把握することができる映像ソリューションです。画像から自動的に人物・顔を検出して、性別、年齢層などを推定するAIによる画像認識技術を活用した製品となっており、店舗のマーケティングに活用できます。
いかがでしたか? ファッション業界でもさまざまなAIが活用されており、今後もますます活用事例は増えていくでしょう。これらのツールは、いずれもAIと人間の共同作業によってファッションデザインを支援するものです。AIが服のデザインをすべて行うことは難しく、人間がデザインをする際に思考回路を広げるためにAIを活用するというのが現状の使われ方です。AIファッションデザインはまだ発展途上の分野ですが、今後もさまざまなイノベーションが期待されます。
AIをうまく活用して、AIと共存していくことが、未来のファッション産業でも生き残るカギとなるかもしれません。