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テクスチャマップについて徹底解説!アパレル3Dにおける光学特性の重要性とは?

作成者: wearware|2024/10/15 0:00:00
以前、「U3Mとは?ファッション業界の3Dをもっとリアルに!」の記事で、光学特性と物理特性の2つの情報を含むファイル形式「U3M」についてご紹介しましたが、ご覧いただけましたか?U3Mは3Dのマテリアルに関する情報をひとまとめにしたデータ形式で、バーチャルサンプル作成のためにとても便利ですので、まだ読まれていない方はぜひご一読ください。今回の記事では、その中の光学特性の部分を掘り下げていきたいと思います。

光学特性の表現に必須の「テクスチャマップ」とは?

光学特性とは、物体が光をどのように反射・屈折・吸収するかという性質のことです。3D空間では「テクスチャマップ」と呼ばれる画像を用いて光学特性を表現します。テクスチャマップにはいくつかの種類があり、3Dモデルに色や質感を与えるために使用されます。
例えば、左の画像はテクスチャマップを使っていないオブジェクトで、これにテクスチャマップを適用すると、右の画像ようになります。オブジェクトの色彩が表現されただけでなく、凹凸などの質感まで表現されていることが確認できますね。

 
 

テクスチャマップにはさまざまな種類があり、それらを組み合わせることによってリアルな質感が生まれます。ここからは、各種テクスチャマップの特徴を見ていきましょう。

 
 

多種多様なテクスチャマップ

 

ベースカラーマップ

Diffuse(ディフーズ)やAlbedo(アルベド)とも呼ばれる、色を表現するためのマップです。こちらは織物生地のベースカラーマップですが、写真や画像のようなものであることが分かります。

この織物生地のベースカラーマップを3Dオブジェクトに適用させたイメージが下の画像です。ベースカラーマップのみですと、凹凸の情報が入っていないため、立体感や素材感がなくリアルさに欠ける表現になります。
 
 

ノーマルマップ

法線マップとも呼ばれる、凹凸を表現するためのマップです。ノーマルマップはRGB(赤緑青)をベースに構成されており、面のXYZ方向を3色の強弱で示すことで、立体感が表現されます。

ノーマルマップをベースカラーマップと共に3Dオブジェクトに付加してみると、下の画像のように、生地の質感が追加されたことが確認できます。
ただし、凹凸感はあくまでも表面のみで、オブジェクトのエッジは平面のままであることが分かります。エッジにも凹凸感を与えるには、ディスプレイスメントマップという、また別の種類のマップを使用します。

 

ディスプレイスメントマップ

3Dモデルの平坦な表面に対し、立体的な凹凸を加えるためのマップです。白から黒のグラデーションで表現され、ノーマルマップよりもさらに、リアルな立体感を表現できます。ディスプレイスメントマップを適用した結果を見てみるとエッジにも凹凸ができていることが分かります。

 

ただし、この処理には時間がかかるため、必要な場合に限って適用することをお勧めします。また、一部のレンダラーによっては、このマップが適用されない場合もあります。
 

アルファマップ

Opacity(オパシティ)とも呼ばれ、オブジェクトに透明の情報を与える場合に使用します。白黒で構成された画像で、白い部分は正常に表示され、黒い部分は完全に透明になります。透け感のある素材の場合は、アルファマップを付加することによって、よりリアルに仕上げることができます。

 
 

ラフネスマップ

マテリアルの粗さを表現するマップで、白いエリアはザラザラした粗い表面、黒いエリアはツルツルと光沢のある表面になります。例えば、下の図のようなラメ糸が使用された織物の場合、ラメ糸が使用されていない部分は白色、ラメ糸が使用されている部分は黒色とエリアが分かれています。

 

メタルネスマップ

反射強度の情報が含まれているマップで、Reflectance(リフレクタンス)やGloss(グロス)と呼ばれることもあります。アパレルの生地を扱ううえでは箔押しのようなアイテムやラメ表現などで使用することがあります。

 

テクスチャマップを使用するメリット

ここまでご紹介してきたように、さまざまなテクスチャマップがあり、組み合わせて使用することでメリットが生まれます。
 

リアルな外観

テクスチャマップを使用することで、オブジェクトに質感を与え、リアルな見た目に仕上げられることが大きなメリットです。また、テクスチャマップの合成後は、それぞれのパラメータを調節することによって、凹凸感や光沢感を強めたり弱めたりするなど、自由自在に表現を変化させることができます。

作業パフォーマンスの向上

テクスチャマップを使わずに3Dモデリングをおこなう場合、オブジェクトに凹凸感を付けるためにはメッシュの形状を手作業で変形させる必要があり、高度なテクニックと多大な時間を要します。また、高精細な表現をするためにメッシュの形状を細分化するとファイルサイズが大きくなり、作業効率が低下する可能性があります。テクスチャマップを使うことで、メッシュの分割や修正といった作業をしなくても、3Dモデルの表面に豊かな質感を持たせることができます。

デザインの柔軟性

テクスチャマップは簡単に作成や変更が可能です。異なる色や柄を使ったテクスチャマップを用意するだけで、オブジェクトの見た目を変えることができます。ファッション業界の場合、同じ製品で色違いや柄違いのバリエーションを多数作成することが一般的ですが、オブジェクトはそのままでテクスチャマップを変更してデザイン展開を作成することができるため、企画提案が容易になります。

 

 

アパレル向けのテクスチャマップの作成に最適なツールは?

アパレル業界において、島精機製作所が開発・販売するソフトウェアAPEXFiz®の技術がダントツの評価を得ています。
APEXFiz®の強みは、テクスチャマップの作成に現物の素材を必要とせず、素材そのものを一からデザインできるところにあります。スキャンした糸をベースにバーチャルで生地を作成すると、それと同時にテクスチャマップも仕上がるという、全く新しい手法で作業がおこなえるのが特徴です。テクスチャマップはこの記事の前半で紹介した6種類がすべて揃っているため、そのまま3Dの作成に使用してリアルに仕上げることができます。
 
 
 通常、テクスチャマップを作成するには現物の素材が必要で、それを元に専用ソフトやスキャナーを使ってテクスチャマップを作り出しますが、APEXFiz®の場合は現物の素材を準備せずとも3Dモデリングを完成させることができるため、サステナブルなモノづくりにもつながると言えます。

なお、APEXFiz®では織物、丸編み、タオル、刺繍などのさまざまな素材の作成に対応しており、あらゆるアパレル製品の3Dモデリングがおこなえます。
 
 
※こちらでは省略してマップを3種類のみ表示していますが、実際はベースカラーマップ、ノーマルマップ、ディスプレイスメントマップ、アルファマップ、ラフネスマップ、メタルネスマップの全6種類が出力されます。(メタルネスマップは黒一色で出力されます。
 
 APEXFiz®を使ったバーチャル素材の作成について詳細はこちらの記事でご覧いただけます。
 
 
 

テクスチャマップの活用をマスターしよう!

いかがでしたか?今回は各種テクスチャマップの役割とそれらを使うことのメリット、またテクスチャマップを作成するのに最適なツールについてご紹介しました。
テクスチャマップはファッション業界を含むさまざまな分野の3Dモデリングで活用されており、リアルな外観を実現するために必要不可欠ですので、ぜひ、テクスチャマップの活用方法をマスターして、より魅力的なデザインを生み出してくださいね。