ファッションアイテムの企画・生産プロセスにおいて、デジタル化、特に3D技術を活用したバーチャルサンプリングは珍しいものではなくなってきました。その中でも「靴下」というカテゴリは、他のどのアイテムよりもバーチャル化との親和性が高く、サンプルレスを実現する可能性を秘めています。
本記事では、この靴下業界のDXを牽引する中核ツールである島精機製作所のデザインソフトウェアAPEXFiz®と、その新たなラインアップとして登場した靴下専用デザインソフトウェアAPEXFiz® Design-Soxを軸に、靴下企画の最新動向と、デジタル化がもたらす具体的な導入メリットを徹底解説します。ぜひ、最後までご覧ください。
目次
まずは靴下業界の市場環境と、業界が直面している課題について見ていきましょう。
Maximize Market Research(https://www.maximizemarketresearch.com/)より
世界の靴下市場は、安定した成長を続けています。Maximize Market Research社の調査によると、2024年の世界市場規模は約500億〜550億米ドル(7兆円)に達しています。
さらに、今後の見通しも明るく、年平均成長率(CAGR)は約6%で拡大すると予測されています。
この成長を牽引しているのが、サステナビリティへの関心の高まりを背景とした「エコ素材」の需要増加や、健康志向・スポーツブームを追い風にした「スマートソックス」のような高機能製品の登場です。市場は拡大を続け、同時に製品の多様化・高付加価値化が進んでいるのが現状です。
市場が活況を呈する一方で、生産現場では厳しい要求に直面しています。特に、変化の速いファッション市場のニーズに応えるための「スピード」と「多品種小ロット生産」へのプレッシャーは年々高まっています。
USA Wireが発表した「2024 Sock Production Index」によると、アメリカ国内メーカーの実に93%が「発注後2週間以内」の短納期に対応しているというデータもあります。
このような厳しい要求に応えるため、従来の開発フロー(手描きのデザイン → 編立データ作成 → 実物サンプル製作 → 試着・修正 → 再サンプル…)を繰り返していては、対応に限界があります。この旧来のフローは、リードタイムを長期化させるだけでなく、何度もサンプルを作り直すことによるコストの増大、糸の大量ロス、そして環境負荷という深刻な問題を引き起こしているのです。
市場の成長と多様化、そして生産現場への強いプレッシャー。このギャップこそが、靴下業界が解決すべき最も大きな課題と言えるでしょう。
靴下はTシャツやアウターといった他の衣料品に比べてパーツの種類が限定的です。この「構成要素のシンプルさ」が、デジタル上での再現性を高める大きな要因となり、バーチャルサンプルであっても実物に近い、精度の高い検証が可能となります。
また、シンプルでありながら色柄のデザインバリエーションは豊富なため、多くのデザインサンプルを検討する必要があります。実物に近いバーチャルサンプルを用いて画面上でバリエーションを確認できることは、大きな優位性となります。
この特性により、靴下業界では「3Dで作成したファーストサンプルを確認後、大きな仕様変更なくそのまま量産に進む」という、理想的なワークフローが現実のものとなりつつあります。これにより、従来発生していたサンプル作成のコストや時間、そして糸のロスといった課題を根本から解決できる可能性が見えてきました。
靴下こそ、バーチャルサンプルを活用してデジタル化を進めていくべきだと言えるのです。
それでは、靴下のバーチャルサンプルはどのように作成していけばよいのでしょうか?実際の事例も交えながら、靴下のバーチャルサンプル作成に最適なデザインソフトAPEXFiz®を紹介します。
APEXFiz® は島精機製作所が開発・製造・販売をおこなう、3Dバーチャルサンプルを作成できるデザインソフトです。現物の糸データを利用してバーチャルサンプルを作成するため、本物と見間違うほどのリアルな製品イメージを画面上で確認できます。
APEXFiz®で作成したリアルなバーチャルサンプル
洋服だけではなく、靴下、レギンス、ニット帽といった、ニット小物や、椅子やカーテンといったインテリアなど、さまざまなアイテムの作成が可能です。
バーチャルサンプルについては、こちらの記事で解説しています。
アパレル・ファッション業界の救世主、バーチャルサンプルとは?
今回は、サンプリングの時間とコストが削減できて、ファッション・アパレル業界をサステナブルにする切り札的存在『バーチャルサンプル』についてご紹介していきます。
関連記事
靴下も含む、ニット小物のバーチャルサンプル作成の流れはこちらの記事でご覧いただけます。
ファッション業界のデジタル化を促進するためのソリューションを全6回でお届けしていますが、第4回目の今回は、小物アイテムの企画に役立つデザインツールをご紹介します。パターン(型紙)作成をはじめ、ケーブル柄やジャカード柄などを効率よく素敵にデザインする方法や、カラーバリエーションの作成についても説明します。
関連記事
企画にバーチャルサンプルを取り入れることで、360°すべての角度から、サイズ感や柄配置を確認でき、現物サンプルを繰り返し作る必要がなくなります。これにより、企画にかかる時間や、サンプル作成のコストを削減し、サステナブルなモノづくりを実現できます。
実際に企画にデザインソフトを活用している事例もありますので是非ご覧ください。
デザインソフトの導入により実サンプルなしでもデザインの検討が可能に
Decathlon様は、フランス北部で誕生した世界最大のスポーツ用品企業です。SHIMA SEIKIのデザインソフトAPEXFiz®を導入することで、リードタイムの短縮、サンプリングコストの削減が実現しました。
サイトを見る
関連リンク
大変リアルなバーチャルサンプルの作成が可能なAPEXFiz®ですが、いくつかのラインアップがあり、これまで靴下のシミュレーションをするには、ニットシミュレーションが可能なDesign-Knit、またはすべての機能を網羅したDesign Proのソフトウェアに、オプションで3D機能の追加が必要でした。Design-Knitは編み地スワッチのシミュレーションからプルオーバーやニット小物まで、幅広いニットデザインに対応しており、Design Proはニットデザインはもちろん、織物デザインやシミュレーションの全機能を備えています。両ソフトとも、靴下デザインに必要なもの以外にも、豊富な機能を搭載しています。
一方、2025年6月20日に発売開始となった靴下専用のソフト、APEXFiz® Design-Soxは、専用機能のみを搭載し、3D機能が標準搭載という、靴下業界に最適なソフトとしてラインアップに加わりました。
Design-Soxの追加により、Desin-KnitやDesign Proではオーバースペックと感じていたブランドやメーカー にとっても、靴下のバーチャルサンプル導入のハードルがぐっと下がるのではないでしょうか。
靴下のバーチャルサンプル作成の流れはこちらでご確認いただけます。
ファッション業界のデジタル化を促進するためのソリューションを全6回でお届けしていますが、第4回目の今回は、小物アイテムの企画に役立つデザインツールをご紹介します。パターン(型紙)作成をはじめ、ケーブル柄やジャカード柄などを効率よく素敵にデザインする方法や、カラーバリエーションの作成についても説明します。
APEXFiz®のデモ動画ではDesign-Soxについても詳しく確認できます。
関連記事
バーチャルサンプル作成にAPEXFiz®を使うメリットの一つに、生産連携がスムーズという点が挙げられます。靴下の場合、目数(針数)に落としたデータをBMPで書き出し、生産機用のデータとして利用することが可能です。
特に、イタリアのLonati社のプログラミングソフトORIONとの連携は業界内でも注目が高く、APEXFiz®で作成したデータをORIONに取り込み、プログラマーは3Dでデータを技術的な観点から検証し、生産プロセス全体において潜在的な問題を事前に特定して解決できます。
APEXFiz®とORIONをあわせて活用することで、デザイン設計から生産までのワークフローが最適化され、製品の市場投入までの時間短縮と、高品質な製品供給が実現可能になります。SHIMA SEIKIとLonatiとのパートナーシップによって生まれた革新的なワークフローは、靴下業界に新たな変革をもたらし、ビジネスチャンスの拡大や競争力強化の重要な鍵になると期待されています。
APEXFiz®とORIONの連携についてもっと詳しく知りたい方は、ホワイトペーパーをダウンロードして確認できます。
APEXFiz® Design-Soxは、
という現場ニーズにピッタリなソリューションではないでしょうか。
実際にサンプルレスを実現している靴下メーカーが増えている現状、靴下の企画に特化したDesign-Soxを使わない手はありません。
まずは デモ動画でAPEXFiz®の3Dシミュレーションを確認し、ホワイトペーパーでORIONとの連携について具体的なワークフローをチェックしてみてください。