現在、地球環境は刻々と変化し、悪化の一途をたどっています。そんな中、サステナブルやアップサイクルなどといった言葉を筆頭に、近年では商品パッケージに「エコフレンドリー」と表記された製品が見られるようになりました。今回は、エコフレンドリーな取り組みから素材まで、モノづくりをおこなう上で企業ができる選択、そして消費者として個人ができる取り組みをご紹介します。
目次
エコとは「生態学」を意味する「エコロジー(ecology)」からきており、エコフレンドリー(eco-friendly)は「環境や人、動物にやさしい」という意味を表しています。また、「経済」を意味する「エコノミー(economy)」のエコとも繋がっていて、環境問題を経済的にも解決していこうという意味も込められています。
アパレル・ファッション業界は、環境への負荷が大きいと指摘されています。以前は大量生産・大量廃棄のビジネスモデルが多かったのですが、今業界は変わりつつあります。そこで注目されているのがサステナブルやSDGs、エコフレンドリーといったキーワードです。
ファッション業界で販売されるアイテムの中には、使用する素材やその原料の生産、工賃などにも安さが求められることから、原料を生産する人たちを低賃金で雇うことで労働環境が悪くなったり、原料の栽培の手間暇を省くために化学肥料や農薬を使用して地球環境への悪影響が発生したりすることがあります。また、途上国などで安価に生産した素材を、製造のため別の工場に輸送し、さらにできあがった製品を世界中に輸送する際にも多くの温室効果ガスが排出されてきました。
SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」では、生産から廃棄の過程において環境や人権・社会に配慮したモノづくりをおこない、同時に消費者への啓発も促しています。このようなアパレル業界におけるサステナブルな取り組みについて、詳しく解説した下記の記事もぜひご覧ください。
サステナブルファッションとは? 業界の問題から企業の取り組み、個人ができることまで全部紹介
ファッション・アパレル業界における「サステナブルファッション」の取り組みについてご紹介します。地球環境や自然環境を守り、これからも継続的に発展していける社会の実現を目指すために、今、私たち全員に必要な活動です。
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まず、実際にエコフレンドリーに取り組んでいるアパレル企業の事例をご紹介します。
衣料ブランドUNIQLOを国内外で展開する株式会社ファーストリテイリングは、環境への負荷を少しでも減らすためにさまざまな努力をしています。
1着のTシャツを製造するのに必要な水は2,720リットル、1着のジーンズを製造するのに必要な水は10,850リットルと言われている中、ユニクロはジーンズの加工時に使用する水を最大99%減らせる技術を開発しました。
また、「RE:UNIQLO(リ・ユニクロ)」というプロジェクトを発足し、全商品をリサイクルして新たな衣服や資材として活用する取り組みも始めました。店頭で自社商品の回収をおこない、リサイクルのほか、一部のアイテムは支援衣料としてリユースされています。
ユニクロ公式サイト(https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/clothes_recycling/re-uniqlo/)より引用
例えば、ダウンジャケットから取り出した中綿を新たな商品に詰め替えて出荷することで、製造過程における二酸化炭素の排出量を20%削減しました。
2019年にリュックの素材を再生ナイロン「エコニール」にリニューアル。エコニールを使用した製品を「プラダ リナイロン(Re-Nylon)」コレクションとして展開しています。エコニールは、海から集めたプラスチックの廃棄物や繊維廃棄物、漁網などを浄化したものを再利用した素材です。この再生ナイロンは何度でも再生できるうえに、温暖化への影響を80%カットし、1万トンのエコニール繊維につき石油を約1,200万リットル節約できます。
プラダ公式サイト(https://www.prada.com/jp/ja/womens/womens-collection/the-re-nylon-project/c/10549JP)より引用
ラグジュアリーブランドの中で初となる「B Corp認証」を取得しました。B Corp認証とは、社会や環境に対する労働環境やパフォーマンスなどの300以上の基準をクリアした認証の一つです。クロエの特徴的な製品には、リサイクル素材を接着部分や靴紐に使用したスニーカーや、海洋ゴミをリサイクルして作られたサンダルなどがあります。
クロエ公式サイト(https://www.chloe.com/jp/chloe/shop-online/%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%B9/lower-impact-products)より引用
株式会社島精機製作所は、BLUEKNIT(ブルーニット)という、循環型社会の実現に向けたニット専門のオンラインショッピングモールを運営しています。サステナブルな素材で作られたニット製品全般を取り扱っており、いらなくなった製品は島精機製作所が買戻し、必要に応じてリペアし、リセールします。リセールできない製品は島精機製作所が責任をもって、素材に応じた最適なリサイクル方法で再資源化をおこないます。
BLUEKNITは、地球環境に配慮し、心身に優しく、生産者を支え、エシカル社会を目指すという4つの観点をもとに、資源を循環させることに取り組むプラットフォームとして立ち上がりました。天然素材の割合が多く、リサイクルしやすいニットを通じたサーキュラーエコノミーへの貢献も果たしています。
さらに、ニットメーカーのD2Cの取組支援という形でもサポートしており、国内生産の割合を高めるといった目標も掲げています。
BLUEKNIT公式サイト(https://blueknit.jp/)より引用(下記サイト)
BLUEKNIT store(ブルーニットストア)オフィシャルサイト
循環するニット製品で地球の未来を考えるSHIMA SEIKIが運営するオンラインショッピングモール。BLUEKNIT(ブルーニット)は、地球環境に配慮し、心身に優しく、生産者を支え、エシカル社会を目指すというこれら4つの観点をもとに”資源を循環させる”ことに取り組むプラットフォームとして立ち上がりました。
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ここまで企業側のエコフレンドリーな取り組みについて紹介してきましたが、私たち個人が一般生活の中でできるエコフレンドリーな取り組みにはどのようなことがあるでしょうか?
エコフレンドリーな暮らしの基本は、3Rを心がけることです。
長く着られる服を選んで大事にお手入れする、食品を買いすぎないようにして食品ロスを減らす、など
まだ使用できるものは捨てずに繰り返し使用する、着なくなった服は古着屋、フリマサイトに出店する、など
再生素材を使用する、ペットボトルやカン・ビンなど再生可能なものをリサイクルに出す、など
例えば身近なところで衣服やファッション製品は、どのようにしてエコフレンドリーかどうかを見分ければ良いのでしょうか?分かりやすい例としては、認証マークで判断することができます。認証マークには3つのタイプがあります。
タイプⅠ(ISO14024)第三者認証:独立した機関が厳正に審査し、合格した事業者や一部アイテムに対して与えられるもの
タイプⅡ(ISO14021)自己宣言:事業者が自ら判断し、環境に良いと宣言しているもの
タイプⅢ(SIO14025)環境情報表示:製品に関する環境負荷の定量データを示すもの
ここでは、タイプⅠ(ISO14024)第三者認証の例をいくつか紹介します。
グリーンウォッシュとは、エコなイメージに繋がる「グリーン」と、ごまかしや上辺だけという意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語です。環境に配慮しているように見えるものの実際はそうではなく、環境意識の高い消費者に誤解を与えることを指します。
素材が一見環境にやさしそうでも、栽培地では森林破壊・生態系の撹乱に繋がる行為がおこなわれていたり、一部の商品はエコフレンドリーに相当するものの、同企業の他事業で環境破壊に繋がる行為がおこなわれていたりする場合もあります。このようなグリーンウォッシュを見抜くためにも、第三者機関による認証があるかどうかはひとつの判断基準となるのです。
エコフレンドリーなモノづくりや製品選びには、素材も重要です。天然繊維はもちろん、植物由来の化学繊維やリサイクル繊維も今注目を集めています。
ユーカリの木材パルプが原料の再生繊維です。繊維にする過程で再利用可能な溶剤を溶かして糸を作るため、環境への負荷も少ないのが特徴です。また、コットンに比べて栽培時の水の使用料を90%も削減でき、貴重な水資源を守ることができます。
ブナの木材パルプが原料の再生繊維で、有害な廃棄物を出さずに作られることから、自然と共存する合成繊維と言われています。強度が高く、吸湿性や放湿性に優れている一方、シルクのようななめらかな光沢や肌触りが特徴で、その柔らかさはコットンの2倍にもなります。
綿花を採取したあとの綿の種(コットンシード)の周囲についている、本来は繊維として利用しない2~6mmの産毛の部分(コットンリンター)を原料に作られた再生繊維です。柔らかくしなやかでドレープ性に富むのに加え、染色性が良いのが特徴です。
ペットボトルを回収して粉砕し、糸や繊維として再生することで生地にしていきます。通常のポリエステル生地に比べて生産時に発生する石油の使用料を削減でき、二酸化炭素の排出量も抑えられます。軽くて耐久性に優れ、さらりとした肌触りが特徴です。
牛乳パックをリサイクルして作られている糸もあります。例えばサステナブル素材ブランド「ReMateri®」が製造している「REPAC®」という糸は、1kgの糸製造あたり約233gのCO2排出量削減に貢献します。環境にやさしいのはもちろん、紙糸なのでサラッとした独特の肌触りに加え、吸水性と防臭性を兼ね備えています。
ここからは、企業やメーカーがエコフレンドリーな素材を使用したアパレル製品を作るために、実際の糸を探すことのできるサービスをご紹介します。yarnbank®は、世界中の糸を検索・閲覧できるウェブサービスです。さまざまな条件から環境に配慮した糸を見つけ出すことができます。さらに、第三者認証を指定して検索することもでき、認証番号や有効期限などの詳細もサイト上で閲覧できます。yarnbank®のサイトで検索することができる第三者認証は10種類あります。(※検索条件によってはヒットしない可能性があります。)
また、気に入った糸があれば糸データをダウンロードし、デザインソフトAPEXFiz®でリアルなバーチャルサンプルを作成することもできますので、素材だけでなくモノづくりの工程までサステナブルにおこなえます。
yarnbank®についてはこちらの記事で詳しく解説されています。
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いかがでしたか?エコフレンドリーな社会を築いていくためには、事業者がモノづくりやサービスの提供をおこなう際に環境に配慮した上で、私たち個人も日々の暮らしの中で環境にやさしい選択を心がけていくことが必要不可欠です。商品の企画から消費に至るまでエコフレンドリー素材を意識し、持続可能な未来に繋げていきましょう。