サステナブルファッションとは? 業界の問題から企業の取り組み、個人ができることまで全部紹介

2022/06/03 11:27:37


皆さん、こんにちは。ファッション・アパレル業界の未来を救うお役立ちサイトwearware(ウェアウェア)です。

いつの頃からか本当によく耳にするようになった、サステナブルという言葉。サステナブルな社会を実現するために、あらゆる業界でさまざまな取り組みがおこなわれており、ファッション業界も例外ではありません。でも、いざ、自分も貢献したい! と思っても、そもそもサステナブルな社会とはどういうものなのか具体的にはよく分からないですよね。アパレル企業はどんな取り組みをしているの? 私たち一人ひとりができることってあるの? と感じている人も少なくないと思います。そんな方に、いまさら聞けない「ファッション業界におけるサステナブル」について、一挙にご紹介します。

サステナブルファッション

サステナブルファッションとは

「サステナブル」とは、本来「持続可能な」という意味の言葉です。「エコ」や「地球に優しい」といった環境に良いという意味の言葉と少し混同して使われていることも多いです。「サステナブルな社会」とは、地球環境や自然環境を守りつつ、世界中のすべての人々が健康で安全な生活を送ることができ、これからも継続的に発展していける社会を指します。そして、次の世代に継承するために、私たち全員にその実現のため努力する義務があります。

ファッション業界におけるサステナブルとは

SDGs No.12(つくる責任・つかう責任)

大量生産、大量消費、大量廃棄を繰り返してきたファッション産業は、石油産業に次ぐ世界第2位の環境汚染産業と位置付けられています。サステナブルな社会を実現するためには、ファッション産業の仕組み自体を早急に変革させる必要があります。 

ファッションという視点でSDGs(持続可能な開発目標)を考えると、12番目の目標「つくる責任 つかう責任」が特に当てはまります。供給側では、本当にこの服をこの方法でこれだけの量を作って良いのか、と考える企業も増えつつあり、消費者側も単純にトレンドを追いかけて使い捨てのように服を買って着るのではなく、服づくりの背景を気にかける層が拡大しています。

 

どういう服をサステナブルな服っていうの?

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「サステナブルな服」がどういう服なのかよく分からないと思っている人は意外と多いのではないでしょうか? リサイクル繊維など、環境負荷の少ない素材を使っている、劣悪な労働環境で生産されず公正な取引がなされたものであるなど、いくつかの定義がありますが、「生産から廃棄まで持続可能な形のファッション衣料」を指します。もう少し噛み砕くと、「流行に左右されずに長く着ることができて、真っ当な方法で生まれた服」なのかもしれません。ファストファッションブランド各社も軒並み「サステナブル」を打ち出していて、これまでの大量生産、大量消費を前提としたファッションビジネスに対して、企業側も消費者側も「No」と言わなければならない時がすでに来ています。

 

エシカルファッションとの違いや関連性は?

「エシカル」も、サステナブルと混同してよく使用される言葉のひとつですが、もちろん言葉自体の意味が違って、「エシカル」は「倫理的な」という意味です。そこから、エシカルファッションとは、生産する人々の人権や労働環境など社会的な問題に配慮して作られた衣服ということになります。サステナブルファッションという言葉もこれらの意味を含みますが、生産者の長時間労働や低賃金、児童就労などによって作られた服ではないか、という道徳観や倫理観がより重視されています。

 

サステナブルとはほど遠い?ファッション業界の問題

環境問題や、労働環境、人権などの社会問題をはじめ、さまざまな課題を抱えるファッション産業。どのような問題があるのかを理解すれば、なぜ今、サステナブルファッションが強く求められているのかを紐解くことができるでしょう。

服の一生。服が作られてから廃棄されるまで

企画段階を含め、原材料の生産、衣服の製造から、人々が着用し、不要になって手放すまでには、5つの段階があります。

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ファッション業界が地球環境に与える影響とは

「企画・製造」、「販売」、「利用」、「廃棄」のすべての段階において、環境に対する多大な影響、負荷があるのが現状です。しかしながら、ファッション業界では、サプライチェーンがグローバル、かつ複雑に細分化されており、問題の実態を全体的に把握するのが難しくなっているのが実情です。

企画・製造段階での負荷

・商品企画時のサンプリングによる素材の大量消費、サンプル製品の大量廃棄
・綿などの栽培や紡績、染色に必要な水の消費、農薬、化学肥料による土壌汚染
・合成繊維で使用される石油、工場から排出されるCO2
・綿などの原材料や余り生地などの廃棄物

販売段階での負荷

・過剰在庫による大量廃棄

利用段階での負荷

・洗濯による、水と電力の大量消費
・洗濯時の洗剤、柔軟剤による水質汚染や、化学繊維の洗濯によるマイクロファイバー流出などの水質汚染
・ドライクリーニング、アイロン、乾燥によるCO2排出

廃棄段階での負荷

・焼却によるCO2排出
・化学繊維の埋め立てによる土壌汚染

輸送による負荷

・原材料の調達によるCO2排出
・衣服の生産地から消費地までの輸送によるCO2排出
・廃棄物回収の際の輸送によるCO2排出

サステナブルファッションを実現するための取り組み

ファッション産業を取り巻く課題が把握できましたか? 続いて、これらを解決し、次世代や未来を見据えたより良い社会へと導くためにおこなわれているアパレル企業・ブランドの取り組みや、私たち個人ができることを紹介します。

アパレル企業がおこなっているサステナブルな取り組みは?

気候変動による異常気象や、従来型の産業形態がもたらす環境破壊が急速に身近に感じられる昨今、サステナブルを意識しない服作りをしている企業やブランドは消費者から厳しい目を向けられ、淘汰されていくと言っても過言ではありません。

*アニマルフリー

アニマルフリー

動物の毛皮を使用することは、自然の生態系を破壊することにつながり、また畜産では温室効果ガスが排出されます。本物のような風合いを持つフェイクファーやフェイクレザー、植物由来のベジタリアンレザーなどが開発され、代替されています。

*リサイクル素材を使用する

リサイクル素材

ペットボトルなど不要なプラスチックから作られるリサイクルポリエステルは、ペットボトルなどを粉砕して溶かし、ポリエステル繊維として再生させたもので、マテリアルリサイクルというシステムが使用されます。ポリエステルと同じ高機能を持ちながら、原料となる石油を必要とせず、CO2排出の削減になります。
また、ポリエステル繊維の製品に対して化学的な処理を施し、分子レベルである原料(モノマー)の状態に戻してから繊維に再生させるシステムは、ケミカルリサイクルと呼ばれます。
石油から生成するバージンポリエステルと比較すると、水の使用を約60%、CO2排出量を35%程度削減することができます。品質、機能性ともに高い再生繊維を作ることができる点に加えて、何度もリサイクルすることが可能です。

*オーガニック素材を使用する

オーガニックコットン

農薬や化学肥料を使用しない有機栽培の素材は、土壌汚染などの環境被害を低減し、生産者の健康にも配慮されたやさしい繊維です。

*フェアトレードをおこなう

フェアトレード

フェアトレードとは、「公正取引」を意味する言葉です。世界中で流通する衣類の多くが発展途上国で生産されており、そこで働く人々の労働環境の過酷さはファッション産業の大きな問題となっています。労働者が人間らしい生活を営み、正当な賃金を得られるように、製品が適正な価格で取り引きされることもサステナブルな取り組みのひとつです。

*受注生産

受注生産

見込み生産による売れ残りやそれに伴う大量廃棄は、環境に多大な影響を及ぼします。
必要に応じて生産する受注生産をおこなえば、資源の無駄使いや焼却処分にともなう温室効果ガスの排出や埋め立てによる土壌汚染を大幅に減らすことができます。

*バーチャルサンプリングを取り入れる

アパレル製品は、商品化される製品を決める前に大量のサンプル製品をつくります。このサンプリングの段階でも、大量の素材が使用され、商品化されなかった製品は廃棄処分になります。サンプル製品を実物でつくるのではなく、コンピューター上で作成できる下記のようなバーチャルサンプルにすれば、廃棄される服を削減できます。また、バーチャルサンプルは、Eコマース用の商品画像としても使用することができます。生産する前に予約販売や需要予測をおこなえば、生産量を適正に保つことができ、売れ残りを削減することができます。

バーチャルサンプリング

バーチャルサンプルのメリットについては、下記の記事でも紹介されています。
バーチャルサンプルを作成するなら、こちらのソフトがおすすめです。
 
バーチャルサンプリングを含むアパレル業界のDX化についても、下記の記事で紹介しています。

*無縫製ニットWHOLEGARMENTを採用する

ニット製品の場合は、ホールガーメントの採用がサステナブルファッションの実現に効果的です。ホールガーメントは機械から一着丸ごと編み上げられるため、たくさんのパーツを縫い合わせる必要が無いことから、裁断した残りの生地を廃棄することもありません。使用する糸の無駄を最小限に抑えて、限りある資源を有効に使うことができます
また、服の状態で編みあがり、縫製が必要ではないため、生産してからお客様の手元に届くまでの時間が短くて済み、必要な時に必要な分だけ作れる消費地生産が可能です。この「服の地産地消」により、海外での過酷な労働条件による生産に依存することなく、運送におけるCO2の排出やエネルギーの消費も削減できます。

WHOLEGARMENT

 

サステナブルファッションに対する意識調査

ここまで、アパレル企業など生産者側の立場からサステナブルファッションへの取り組みについて説明しました。ここからは、消費者の目線で考えてみましょう。

サステナブルファッションの意識調査

これは、ファッション・アパレル産業における大量生産・大量廃棄に関する社会課題についての認知度と、取り組みの実態を調査した結果です。(物価モニター調査(令和3年7月)より)アパレル業界の環境負荷や、サプライチェーンに関する課題を認識しているのは約4割に留まり、具体的な行動をしている人も1割強にしか届いていません。まだまだ社会全体での意識の向上が求められています。

 

一人ひとりができる取り組みって何?

生産者サイドの企業やブランドだけではなく、私たち個人ができる取り組みもたくさんあります。より多くの人が意識を変えることで、社会や地球環境を少しでもより良くしていきたいですね。

個人ができるサステナブルな取り組み

*本当に必要かどうかよく考えてから購入しよう

買ったけれどほとんど着ない服は誰もが持っているのではないでしょうか。一度ワードローブを見直してみて、必要な服を必要な時に購入できるようにしましょう。

*サステナブルな取り組みをしている企業・ブランドの服を買おう

ショップスタッフの方に素材について尋ねたり、ブランドのwebサイトにサステナブルに対する取り組みを紹介している企業もたくさんあります。後述の「サステナブルな素材」もぜひ参考にしてみてください。

*国際認証された製品を選ぼう

厳しい基準に基づいて、第三者機関によって認証された製品や素材を選びましょう。リサイクル製品に対するGRS(Global Recycle Standard)認証、オーガニック素材のテキスタイルに関するGOTS(Global Organic Textile Standard)認証や、フェアトレードが実施されている製品に対するフェアトレード認証などがあります。

フェアトレード認証について:https://www.fairtrade-jp.org/

*できるだけ長く着よう

一人ひとりが今よりも1年長く着るだけで、日本全体で廃棄衣料を一年間で数万トン削減することができます。

*素材に合った洗い方をしよう

丁寧にケアすれば、衣服を長持ちさせることができます。また、専用の洗濯ネットを使用して洗うことで、海洋汚染を引き起こす原因となるマイクロプラスチックの流出を防げます。

*廃棄せずにリユースしよう

リサイクルショップやフリーマーケットアプリなど、衣類を気軽に再利用できるシステムが揃っています。兄弟姉妹やお友達間でのおさがりもリユースのひとつですね。

 

サステナブルな素材

「アパレル企業がおこなっているサステナブルな取り組みは?」でも少し取り上げましたが、ここでは具体的な素材の種類について紹介します。

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サステナブルな素材とは

サステナブルな素材とは、自然環境や原材料の生産者の健康などに配慮した素材、環境負荷の少ない素材のことで、「天然素材」と「リサイクル素材」の2種類があります。
天然素材は、廃棄しても生分解され、土に還るため、自然環境への負荷を少なくできます。リサイクル素材は、廃棄されるものを再生してつくられた素材で、限りある資源を最大限に有効活用し、焼却、埋め立てによる大気汚染、土壌汚染などを低減できます。


生地素材の種類

リサイクル素材

【植物系再生繊維】
リサイクルコットン

今までは廃棄されていた、紡績の際に出る落ち綿や、縫製の際に生まれる生地の切れ端を再利用して作られたコットンの糸です。紡績に必要な水や排出されるCO2を減らすことができます。

再生セルロース繊維

植物や木材の成分を化学的に再生して作られた繊維です。天然素材を使用しているため、生分解性があり、環境への負荷が少ない素材です。代表的なものに、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどがあります。

【化学系再生繊維】
生分解性プラスチック

土壌や海洋の微生物や酵素によって水と二酸化炭素に分解されるプラスチック。焼却が不要であるため環境負荷が少なくなります。

バイオマスプラスチック

トウモロコシやサトウキビなど植物由来の原料をもとに作られているプラスチック。石油のように枯渇することがない資源であり、植物由来であるためCO2の削減に貢献します。
生分解するものとしないものがあります。

【その他】
無水染色素材

水をまったく使用せずに二酸化炭素で染色する技術が使われた生地素材です。繊維を染色する際に必要な水の量を抑えることができ、また大量の廃水をなくすことにより水質汚染などの環境被害を低減します。

天然素材

オーガニックコットン

オーガニックコットンではなくてもコットンには生分解性があり、お肌にやさしいなどのメリットがありますが、通常の綿栽培では農薬や化学肥料が使用され、環境や生産者への負荷が大きくなっています。自分に対するメリットだけではなく、環境や生産者に対しても優しい素材を選びたいものです。糸データ検索WEBサービス「yarnbank」を活用すれば、第三者機関によって認証された糸を探すことができます。


yarnbankについては、下記の記事でも紹介されています。

サステナブルファッションを提案している企業・ブランド

 

国内の企業・ブランド

ユニクロ

ユニクロ海外に比べると、まだまだサステナブルに対する意識が高いとは言えない日本において、より精力的にサステナブルへのシフトを進めているのがユニクロ。地球、社会、人、みんなにとっていい未来へ進むため、多くの取り組みを実践しています。
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/report/2021/planet/
 
 

ベイクルーズ

ベイクルーズファッション業界が抱える問題のうち、最も大きいもののひとつが廃棄衣料です。ベイクルーズでは、スタッフが所有するファッションアイテムをリユースするショップ「CIRCULABLE SUPPLY」を運営しています。CIRCULABLE の名前の通り、不要になったものを捨てるのではなく、必要な人の元へ循環させる仕組みになっています。
https://www.instagram.com/circulable_supply/?hl=ja
 

島精機製作所

SHIMA SEIKI無縫製ニット ホールガーメント横編機や、バーチャルサンプルを作成できる3Dデザインシステム SDS-ONE APEXシリーズを開発、製造、販売している機械メーカー。人にやさしく、地球にやさしいモノづくりを通じて、サステナブルファッションを提案しています。サステナブルがこれほど世の中で謳われるようになる以前の2017年にはすでに、自社製品を通じたサステナビリティの提唱をおこなっていました。
内閣府政府広報室の広報事業においても、ホールガーメントとバーチャルサンプリングを組み合わせたファッション産業へのソリューション提案が、持続可能な消費と生産を実現することができる日本の先進的な技術として紹介されています。
https://www.shimaseiki.co.jp/company/csr/sdgs/
 
 

海外の企業・ブランド

Patagonia(パタゴニア)

パタゴニア アメリカ カリフォルニア州に本社を置く衣料品、アウトドア用品などを製造販売するメーカー。2019年、国連における最高の環境賞である「地球大賞」を受賞しています。
原材料の生産から店舗での販売まで全てのサプライチェーンに渡り、環境的、社会的責任に配慮するサステナブル先進企業です。
https://www.patagonia.jp/social-responsibility/
 

ECOALF(エコアルフ)

ECOALF(エコアルフ)
 
スペイン発のファッションブランド。すべての商品を、環境負荷が低いリサイクル素材や天然素材で作っています。フィッシングネットやタイヤなど海から集めたごみを元にして作られたアイテムもあります。
https://ecoalf.jp/contents/aboutecoalf
 
 

GAP

Gapアメリカ サンフランシスコに本社がある衣料品ブランド。気候、水、廃棄物や衣料品の循環性から従業員の地位向上、人権まで、包括的にサステナブルの実現に取り組んでいます。
https://www.gapinc.com/ja-jp/values/sustainability
 
 
 
 

Banana Republic

Banana RepublicGAPを親会社とする、アメリカ カリフォルニア州に拠点を置くSPA(製造小売業)です。リサイクルコットンやオーガニックコットン、再生セルロース繊維などサステナブル素材を使用し、工場では従来に比べて20%以上の節水が可能な技術を採用し、商品を製造しています。安全な化学物質の使用も推進しています。
https://bananarepublic.gap.co.jp/browse/info.do?cid=1131224

 

 

サステナブルファッションの未来

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日本におけるサステナブルファッションに関する動きも紹介しましょう。一年に2度開催されている「サステナブルファッションEXPO」では、オーガニック、リサイクル、アニマルフリー、フェアトレードなどサステナブルに配慮した素材やファッションアイテムが世界中から出展されます。

また、サステナブルファッションを支える技術を披露する場として、「ファッションDX EXPO」も併催されます。デジタルトランスフォーメーション(DX)は、原料や素材の無駄を省くだけでなく、商品企画段階のサンプル作成や輸送費、そして業界に関わる人々がよりクリエイティブな仕事をするために必要不可欠なインフラとも言えます。

例えば、リアルの服と同時にデジタルファッションを楽しめるような形や、リアルの服を企画・販売するにあたり、デジタル技術の進歩は目覚ましいものがあります。サステナブルファッションEXPOやファッションDX EXPOを含む「ファッションワールド東京」は、2023年10月にも開催予定。ぜひ会場で、最新技術・ソリューションに触れて、今日から始められるサステナブルファッションを考えてみてください。

 

wearwareはファッションデザインのデジタル化を応援しています。

次回の更新もお楽しみに!

Tags: サステナブル

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