皆さん、こんにちは。ファッション・アパレル業界の未来を救うお役立ちサイトwearware(ウェアウェア)です。
国内外問わず業界内での生き残り競争が激化しているアパレル業界に、DX化の波が届き始めています。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、ITやAIなどのデジタル技術を活用し、新たなサービスやビジネスモデルを創出するとともに、業務や組織の文化を変革することで、私たちの生活をより豊かにすることを指しますが、新型コロナウイルスの影響やデジタル庁の発足により、昨今、あらゆる業界でDX化が推進されるようになりました。そんな中アパレル業界では依然導入の障壁があり、DX化の意義は感じつつも遅れをとっている現状があります。今回は、アパレル業界のDX事例を詳しくご紹介し、今後導入するにあたって役立つセミナーもご案内します。
目次
- DX化を実現しているアパレル企業の取り組み事例
・AIを用いたデジタル採寸【ZOZOTOWN】
・RFIDタグを利用した在庫管理【ファーストリテイリング】
・実店舗では販売しない戦略【FABRIC TOKYO】
・3Dデザイン技術の導入【トミーヒルフィガー】
・展示会・ファッションショーのデジタル化【Badgley Mischka】
・バーチャルマーケット【アダストリア】
・店舗のデジタル活用
・スマートグラスやバーチャルヒューマンの活用 - アパレルがDXを活用するメリット
・業務の生産性が向上する
・市場や顧客ニーズをキャッチすることで顧客満足度が向上する
・サステナビリティを考慮した取り組みを実践できる - アパレル業界でDX化が進まない理由・課題
・試着ができない
・消費者のニーズを把握できていない
・販売スキルに属人的な要素が強い - アパレルがDX推進するために役立つセミナーをモノづくりの現場からご紹介
・ニットのモノづくりをデジタル革命!―製品企画から生産までのDXを実現―
・3Dバーチャルサンプリングを効率化!―素材データを手早く準備する方法―
・ファッションテックウェビナーシリーズ録画アーカイブ一挙公開! - アパレルのDX化にはバーチャルサンプリングが必須
DX化を実現しているアパレル企業の取り組み事例
AIを用いたデジタル採寸【ZOZOTOWN】
ZOZOTOWN公式サイト(https://zozo.jp/multisize/)から引用
実店舗での販売が主流だったアパレル業界で先陣を切ったのがZOZOTOWNです。身長・体重を入力すると自分の体にあった商品をおすすめしてくれる「マルチサイズプラットフォーム(MSP)」では、試着ができないというオンライン販売のデメリットを解消しました。さらにMSPの商品開発を効率よくおこなうために、生産データの連携や分析データの可視化など、付随する業務のDX化も実現しています。
ZOZOTOWN以外にも、スマートフォンに専用アプリをインストールするだけで採寸ができる、AIを活用したデジタル採寸が新たなスタンダードになってきました。ディープラーニングによって蓄積した膨大なデータをもとに高い精度で計測するAI技術のおかげで、オンライン販売につきものの返品問題も解消しつつあります。
RFIDタグを利用した在庫管理【ファーストリテイリング】
ユニクロ公式サイト(https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/feature/uniqlo-pay/store/)から引用
「RFID(Radio Frequency IDentification)」とは、一つ一つの商品に付与した情報を、非接触で読み取る仕組みです。ユニクロやGUなどのアパレルブランドを展開しているファーストリテイリングは、RFIDタグを導入しレジを無人化しました。バーコードを読み取ることなく複数の商品を認識できるセルフレジの仕組みは、実際の店舗で体験した方も多いのではないでしょうか。これにより商品が消費者に届くまでの流れも分かり、在庫管理を効率よくおこなえるようになりました。
実店舗では販売しない戦略【FABRIC TOKYO】
FABRIC TOKYO公式サイト(https://fabric-tokyo.com/pages/about)から引用
オンラインでの買い物を楽しむ消費者が増えている現状を踏まえ、実店舗では商品を販売せずに採寸や試着のみを提供するアパレルブランドも出てきました。オーダースーツの販売をおこなうFABRIC TOKYOでは、「D2C(Direct to Consumer)」という自社のECサイトによる直接販売をおこなっています。一度リアル店舗で採寸してしまえば、次回からはそのデータをもとにECサイトからこだわりの一着をセレクトでき、オーダーメイドでありながらリーズナブルな価格で提供することに成功しました。
3Dデザイン技術の導入【トミーヒルフィガー】
トミーヒルフィガー公式サイト(https://japan.tommy.com/sustainability/makeitpossible/making-revolution-possible/)から引用
トミーヒルフィガーは2019年から3Dデザイン技術を本格的に導入し、パターン作成、サンプル作成、ショールーム展示といったすべての製作プロセスを3Dでデザインしておこなうようになりました。2022年秋にはリアルとバーチャルの同時開催で最新コレクションを発表し、アバターモデルも登場。ランウェイに現れた新作をすぐに購入できる“See now Buy now”の仕組みを取り入れました。
展示会・ファッションショーのデジタル化【Badgley Mischka】
新型コロナウイルスの影響でリアル展示会やファッションショーの開催が制限され、オンラインでの実施に舵を切らざるを得なくなりました。近年進化している3DCGの技術を用いて、バーチャルファッションショーを臨場感を持たせて開催することで、高く評価された事例もあります。
例えば、アメリカのラグジュアリーブランドであるバッジェリーミシュカ(Badgley Mischka)は、ファッションショーにDXを導入し、観客が手元でランウェイを楽しめるモバイルアプリを開発しました。観客はモデルが着用している衣装の情報をリアルタイムで見てお気に入りのものにいいね!ができ、人気投票の結果は生産量の決定に役立てられます。
また、島精機製作所はアパレル業界のDX化を促進すべく、創立60周年記念コレクションをバーチャルファッションショー形式で公開しています。従来のファッションショーでは、会場、モデル、ヘアメイク、スタイリスト、スタッフなどを物理的に用意し、特定の時間にお客様を招待する必要がありましたが、バーチャルサンプルを活用したバーチャルファッションショーではいつでもどこでも楽しむことができます。
島精機製作所のバーチャルファッションショー
ここで、バーチャルサンプルについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
アパレル・ファッション業界の救世主、バーチャルサンプルとは?
サンプリングの時間とコストが削減できて、ファッション・アパレル業界をサステナブルにする切り札的存在『バーチャルサンプル』についてご紹介していきます。
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バーチャルマーケット 【アダストリア】
さまざまな展示や体験、アイテムの売買ができる世界最大規模のVRベント「バーチャルマーケット」では近年、ファッション系企業も複数出店しています。これまでに伊勢丹新宿本店やビームス(BEAMS)などの企業も出店経験があり、仮想空間での動向を受けて、リアル店舗を持つアパレル企業もバーチャルファッションのアイテム開発に次々と乗り出しています。
アダストリア公式サイト(https://www.adastria.co.jp/entry-15489/)から引用
最近では「Play fashion!」をミッションに掲げるアダストリアもメタバースに参入。多種多様な価値観で個々のファッションが楽しめる世界を作るべく、クリエイターとともにオリジナルのメタバースファッションアバターを制作しました。今後はアバター試着会なども予定しています。
店舗のデジタル活用
デジタルサイネージやスマホアプリを活用したバーチャル試着やアバターの作成、ECと連動したデジタルな購買体験など、新しいアプローチも出現しています。島精機製作所でも、3Dバーチャルサンプルを活用したデジタルカタログを提案しており、デザインソフトAPEXFiz®のバーチャルサンプルを使用することで、現物サンプルがなくてもデジタルカタログを作成することができ、店舗に在庫がない状態での商品提案を可能にします。まさに、店舗スペースのデジタル拡張ですね。
また、展示されている実物サンプルにスマートフォンをかざすと詳細情報をARで確認したり、展示スペースから離れた場所にいてもサンプル展示の様子を360度VRで体験したりできるwebコンテンツもあります。こういったXRコンテンツの活用は、アパレル店舗やECサイトでの運用を見据えての提案となっています。
スマートグラスやバーチャルヒューマンの活用
スマートグラスを着用するとバーチャルサンプルが目の前に表示され、近づいたり回り込んだりして商品のディテールを見ることができる技術があります。半透明のグラスのため目の前の景色に3Dが投影され、あたかもそこに存在するかのような体験ができます。
また、360度方向から複数台のビデオカメラで撮影したボリュメトリック撮影をもとに、3D空間に再現されたモデルがランウェイを歩く様子も楽しめます。
360度ショールームの「VR-knit.com®」では、バーチャルサンプルをVR空間で見ることができ、高精細なシミュレーション画像や、AR機能を使ってサンプルを360度どこからでも確認できます。また、コレクションのテーマに合った空間でより製品の魅力を感じることもできます。
通常3DバーチャルサンプルをXRコンテンツで使用する場合、端末のスペックが影響するためデータの軽量化が必須ですが、Googleのクラウドレンダリングを活用すれば、高精細なバーチャルサンプルをそのまま表示することが可能になります。
KDDI公式サイト(https://www.kddi-research.jp/topics/2021/091001.html)から引用
「au VISION STUDIO」が企画・開発したバーチャルヒューマン「coh」は、限りなく人間に近いビジュアルを持った全身フルCGのバーチャルモデルです。こちらの写真はホールガーメント®のニットドレスを着用しており、cohにバーチャルサンプルを着せて製品PRや店舗活性化につなげることができます。
※これらのデジタルコンテンツは、KDDIと島精機製作所が共同開発した「XR マネキン for APEXFiz®」というXRプロダクトです。
アパレルがDXを活用するメリット
ここまで、DX化を実現しているアパレル企業の取り組み事例を見てきましたが、DX化を促進することでどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な3つのポイントを紹介します。
業務の生産性が向上する
商品の在庫管理をデジタル化し、一元化することで、人の手で時間を要していた作業が短縮され、業務の効率化を図ることができます。分析業務などもDX化することで、セール商品の選定や品番ごとの価格設定がスムーズになります。
また、店舗の運営そのものをDX化していくことで、少人数での店舗運営が可能となります。アパレル業界でも人手不足が課題となる中、業務プロセスを改善させ、人とデジタルを融合させた環境づくりは、今後より重要になってくるでしょう。
市場や顧客ニーズをキャッチすることで顧客満足度が向上する
顧客情報や購入履歴のデータ化により、消費者の属性とニーズをもとに、すばやく市場に商品を投入できるようになりました。また、身長や体重などのデータの登録を促すことでおすすめのサイズを提案し、オンラインでの購入のハードルを下げることができます。
最近では消費者の相談や質問にチャットで答えるお店も増えてきており、DX化することで人にしかできないサービスの部分を充実させ、顧客満足度の向上を目指す傾向にあります。過去の購入履歴から分析するAIのレコメンド機能と組み合わせることで、一人ひとりにあった提案ができ、リピート購入に繋がります。
サステナビリティを考慮した取り組みを実践できる
アパレルのDX化を通して物理的な素材、原材料不要で商品の提案ができることや、試着やバーチャル空間での着用ができることは、資源を無駄にしないサステナブルな取り組みと言えます。サステナブルな取り組みが社会的にも求められる中、それに応えることはどの業界でも重要事項であり、企業としても個人としても無視できません。
サステナブルな社会を実現するためにアパレル業界や個人ができる取り組みについては、こちらの記事をご覧ください。
サステナブルファッションとは? 業界の問題から企業の取り組み、個人ができることまで全部紹介
ファッション・アパレル業界における「サステナブルファッション」の取り組みについてご紹介します。地球環境や自然環境を守り、これからも継続的に発展していける社会の実現を目指すために、今、私たち全員に必要な活動です。
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アパレル業界でDX化が進まない理由・課題
アパレルのDX化にはメリットも多く、少しずつ事例も増えています。これはアパレル業界がコロナの大ダメージにより作り方や売り方の変革を求められていること、国内市場が縮小していること、余剰在庫や大量廃棄といった課題の解決が急がれるためです。それなのにアパレルのDX化が未だ本格的に進まないのは、次のような理由によります。
試着ができない
消費者が衣服を購入する際にもっとも重要な決め手となるのが、試着です。実店舗ですら現物を見たときのイメージと実際に試着したときの印象が異なることがあるため、オンラインでの購入はその点において非常にハードルが高くなります。サイズや実際の色、素材、質感などが分からずに購入し、「思っていたのと違った」というギャップが生じかねません。
そのため、試着をして合わなければ返却ができるサービスや、AIを活用して消費者に似合う服をコーディネートしWebで確かめられるサービスなども展開されています。実際に見たり試したりしたいという顧客のニーズに、デジタル技術を活用して顧客を満足させることが、アパレル業界のDX化の課題なのです。
消費者のニーズを把握できていない
これまでアパレルは自らトレンドを生み出し消費者に提供するというスタイルを続けてきました。その結果、顧客データの収集や分析が十分ではなく、競合他社と同じような商品を提供することになり、差別化が困難になっていました。そんな中SNSなどの発展に伴い消費者行動のデジタル化が進んだことで、自ら情報収集・情報発信が可能となり、ニーズも多種多様になりました。このような個々のニーズに応える「One to Oneマーケティング」が今求められています。
販売スキルに属人的な要素が強い
アパレル販売では、来店した顧客とスタッフのコミュニケーションのもと、その人の好みや似合う服装を探り提案するといった、個人の販売スキルに依存する傾向がありました。顧客にとっては満足度の高い一方で、属人的な要素が強く、マニュアル化しづらいといったデメリットもあります。この問題をDX化によって解決するためには、リアル店舗での成功事例をもとにスキルをナレッジ化していくことが必要です。
またオンライン販売では、ライブコマースやインフルエンサーの活用により、属人的でありながらもデジタルを駆使して販売していくといった方法も見られるようになってきています。データ分析やAI技術をフル活用し、リアルとバーチャルをいかに上手く組み合せられるかが課題です。
アパレルがDX化を推進するために役立つセミナーをモノづくりの現場からご紹介
このように、メリットは多いものの課題が山積しているDX化。では、アパレルはどのようにしてDXを促進していけば良いのでしょうか。そのヒントとなるおすすめの無料セミナー(オンデマンド配信)をご紹介します。
ニットのモノづくりをデジタル革命!―製品企画から生産までのDXを実現―
横編みニット業界のリーディングカンパニーが、製品企画から生産までのデジタル・トランスフォーメーションを実現する方法を解説しています。
3Dバーチャルサンプリングを効率化!―素材データを手早く準備する方法―
3Dデジタルプロダクト制作のための生地データの調達テクニックについて紹介しています。ファッション業界では、現物サンプルを作成する前の段階で、3Dソフトを使ったプロトタイプの作成がおこなわれ始めています。
これら2つのセミナーは下記よりお申し込みいただけます。
現物サンプルは作らずに、デジタルプロトタイプの作成が主流になってきた昨今、商品企画全体のデジタル化や効率化が必須になりつつあります。 SHIMA SEIKIが長年培ってきたノウハウや、最新サービスを活用した時短テクニックをセミナーで一挙公開します。
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ファッションテックウェビナーでは、ファッション業界のデジタル化を促進するためのソリューションを全6回のシリーズでご紹介しています。
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ファッションの企画工程において、バーチャルサンプリングを導入するためにどんなソフトを使えば良いのか、生産との連携方法や社内での企画方法など、デジタル化への解決ソリューションをご紹介しています。
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