CLO 3Dユーザーの皆さん、3Dモデルに設定する素材データは、どのように準備していますか? Pitti Immagine Filati no.89(ピッティ・イマジネ・フィラーティ)の、新たに出展者向けサービスとしてスタートしたPitti Studiosでは、PR素材用の3Dバーチャルサンプルを作成することができます。なぜ、伝統ある老舗国際展が、実物ではなくデジタルのサンプル作成サービスを開始できたのか。その秘密に迫ります。
Pitti Filati公式サイト(https://filati.pittimmagine.com/en/news/100percento-Pitti-Filati)から引用
Pitti Studiosとは?
Pitti Studiosは、2021年6月28日〜30日までの3日間、イタリア・フィレンツェで開催された、糸や素材の国際見本市Pitti Filati 89(ピッティ・フィラーティ)に向けてスタートした、新たな出展者向けサービスです。
サービス概要
出展者が提供するのは、わずか30センチメートルの糸のみ。最終製品となるガーメントの3D画像や、リアルなファッションショーのようにアバターがガーメントを着て歩くアニメーション動画といったコンテンツの作成を代行してくれます。
サービスを支える企業
Pitti Filatiの主催者であるPitti Immagine社は、サービス開始にあたり、コンピュータ横編機メーカーの島精機製作所や、デジタルコンテンツ制作に強みをもつクリエイティブスタジオKernedとコラボしています。
Pitti Studiosの意義
昨今、アパレル・ファッション業界では、環境破壊や大量廃棄の問題が取り沙汰されていて、こういった展示会においても、サステナブルやエコというキーワードはよく目にするようになりました。糸メーカーであれば、環境負荷の低い素材の使用や、リサイクルといった切り口の商品提案で、社会的に課されたミッションを遂行することも多いです。ですが、Pitti Studiosでは、商品そのものだけでなく、商品の宣伝方法にまで、気を配る必要があることを訴えているようです。
バーチャルサンプルであれば、全てデジタル情報(画像や映像)ですから、現物素材は不要です。つまり、大量のサンプルを作成し、廃棄することで発生する素材の無駄を避けて、サステナビリティに貢献することができるのです。
バーチャルサンプルのメリットについては、下記の記事でも紹介しています。
Pitti Studiosでは、コラボ企業の革新的なテクノロジーを駆使することで、最初に現物の生地を用意しなくても、完成した衣服をデジタル上で正確に再現します。
Pitti Studiosにおける3Dバーチャルの作り方
Pitti Studiosは、次のような手順で3Dバーチャルの画像や動画を作っています。
作成手順
- 出展者は、Pitti Immagineに30cmの糸を提出します。
- 島精機製作所のyarnbank®というプラットフォームの仕組みを使って糸をデジタル化した後、3Dのバーチャルニット生地を作ります。
- Kernedは、CLO 3Dを使ってアバターが着る服を作り、静止画とビデオの両方デジタルフォーマットで書き出しします。
- このような方法でプロデュースされたバーチャルサンプルは、Pitti Connect内のさまざまな出展者ページでお披露目されることになります。
Pitti Filati公式サイト(https://filati.pittimmagine.com/en/news/pitti-studios)から引用
Pitti Studios製バーチャルが高品質な理由
糸や素材の商談をおこなうPitti Filati展では、糸単体やスワッチではなく、完成製品の例からインスピレーションを得る機会も多いことでしょう。それはオンライン展であるPitti Connectにおいても同様で、特に完成製品のイメージは重要となります。
Pitti Studiosでは、糸提案用の
現物製品サンプルを作るよりも、はるかに速く、資源を無駄にすることもなく、商談で活用できる画像・映像コンテンツを用意することができます。
しかし、それが現物と見劣りしないだけのリアルさが担保されていないと、実際には全く役に立ちません。
素材感アップでワンランク上のバーチャルへ
特にニットは、余程のファインゲージでもない限り、糸を含めた表面の凹凸感や毛羽を表現しないと、たちまち安っぽくなり、いかにも「バーチャル」という雰囲気が色濃く出てしまいます。また、いくらCLO 3Dできれいにレンダリングしたり、3Dモデルにスムーズなウォーキングをさせても、基礎的な部分「素材・テクスチャ」に妥協があると、たちまち残念な結果になってしまいがち。これには、共感できる、苦い経験があるという方も多いのではないでしょうか。
でも、糸データ検索WEBサービスの
yarnbank®や、島精機製作所のデザインソフト
APEXFiz®のようなツールを使えば、そういった課題もクリアすることができそうです。
高品質だからこそ成り立つコンテンツ作成サービス
Pitti Studiosが、Pitti Filati主催者も納得の高い品質を叩き出せているのは、やはり素材・テクスチャの力です。現物に代われるようなリアルさを追求するならば、現物の糸に由来するデータから作り上げるデジタルファブリックや、テクスチャ素材の準備は必須と言えるでしょう。
昨今は、ECサイトなどでの活用も進んでいる3Dバーチャルサンプル。目の肥えた消費者の期待にも応えられるような圧倒的現物感を再現するためにも、細かなところまでこだわっていきたいものです。
Pitti Studiosを使わずに3Dバーチャルを作る方法
さて、ここまでPitti Studiosをご紹介してきましたが、Pitti Filatiに出展していない方は、このサービスの恩恵を受けることはできません。そこで、Pitti Studiosに頼らずとも、自力でPitti Studios並みにハイクオリティな3Dバーチャルを作る方法を説明していきます。
糸のデータを準備しよう(yarnbank®を使おう)
糸メーカーの場合
自社の糸を専用治具でスキャンし、データ化することで、デジタルヤーンを作成できます。デジタルヤーンは糸データ検索WEBサービスyarnbank®で配布することができます。また、yarnbank®では、糸のスキャンサービスも有償でおこなわれています。
アパレル・ブランドのデザイナーの場合
yarnbank®のサイトから、現在、世界中で実際に販売されている糸のデジタルデータをダウンロードすることができます。サイトの登録&利用は、すべて無料です。
自分で生地を作ってみよう(APEXFiz®を使おう)
糸データを取得したら、次はコンピュータ上で3Dモデルに着せ付ける服の生地テクスチャのデータを作っていきましょう。
この時、現物の生地が手元になくても大丈夫。デザインソフト
APEXFiz®を使えば、豊富なライブラリの中からお好みの柄を選択、活用することで、糸から布地にした際のシミュレーション画像を作成できます。
ニットをもっとリアルで立体的にしよう(APEXFiz® Design-Knitを使おう)
さて、これでテクスチャ素材は完成しました。この後、CLO 3Dのユーザーの皆さんは、モデリングした3Dに、テクスチャを貼ってレンダリングする流れになるかと思います。
ここで質問です。今の3Dバーチャルサンプルに満足していますか?
あなたが作る3Dニットウェアは、本物と同等の表情が、細部に至るまで正確に表現できていますか?
実は、デジタルのニットウェアをもっと現物に近づける方法がありますので、ご紹介します。
APEXFiz®には4種類の製品があるのですが、中でもAPEXFiz® Design-Knitという商品に3Dオプションを追加すると、ニットウェアを立体的にシミュレーションして、3Dバーチャル画像を作成することができます。
APEXFiz®のすごいところは、先程出てきたデジタルヤーンを使い、実際にニットウェアを生産する横編機の針の動きを追いながら、1目、1目、立体的にシミュレーションできることです。そうしますと、糸による凹凸感、透け感も現物さながらのリアルさに。これは、決して他のソフトでは味わえない感動です。
まとめ
今回は、現物サンプルに代われるほどリアルな、ニットの3Dバーチャルサンプルの作り方をご紹介しました。
yarnbank®のデジタルヤーンデータを活用し、APEXFiz®で自作した生地のテクスチャデータを、モデリングした服にマッピングする方法は、3D作成ソフトならば、どれにでも応用できます。ぜひ、CLO 3DやBrowzwearなど、既にお使いのソフトとあわせて使ってみてくださいね。