皆さん、こんにちは。ファッション・アパレル業界の未来を救うお役立ちサイトwearware(ウェアウェア)です。
近年、環境問題への関心が高まる中で、ファッション・アパレル業界も大きな変革期を迎えています。中でもサステナビリティに関する消費者意識の高まりにより、企業は持続可能な製品やサービスを提供することが求められるようになりました。今回は、世界の有名アパレルブランドがどのようなサステナビリティ目標を掲げ、新たなビジネスチャンスへと繋げているのか、成功事例とともにご紹介します。
目次
- ファッション企業がサステナビリティ目標を掲げる理由
・持続可能なビジネスモデルへの転換
・市場競争力と消費者ニーズの変化
・長期的なコスト削減
・世界的な法規制の強化への対応 - 有名アパレル企業が掲げる具体的なサステナブル目標と事例
・カーボン・ニュートラルの先を行くバーバリーの「クライメート・ポジティブ」
・人と地球に優しいグッチのサステナブル戦略「Culture of Purpose」
・ブランド価値向上に成功したプラダの「Re-Nylon(リナイロン)」プロジェクト
・世界で最もサステナブルな企業に選ばれたプーマの「FOREVER.BETTER.」
・アウトドア愛好家の心を掴んだTHE NORTH FACEの「GREEN IS GOOD」 - サステナブル目標を達成するための革新的な技術とサービス
・リサイクル技術と循環型素材
・デジタル技術による生産の最適化
・無駄をなくす革新的な製造技術 - 循環型ビジネスモデルと消費者参加型の取組
・循環型オンラインショッピングモール「BLUEKNIT」が実現する「循環させる未来」
・アーバンリサーチのSDGs基本方針「3C」 - サステナビリティ戦略を新たなビジネスチャンスに!地球を救う、次世代のファッションへの道筋
ファッション企業がサステナビリティ目標を掲げる理由
持続可能なビジネスモデルへの転換
アパレル企業にとって、持続可能なビジネスモデルへの移行は、未来を見据えた大切な一歩です。これまでの大量生産や大量消費から脱却し、限りある資源を循環させながら、気候変動という課題に立ち向かう責任があります。この変化は企業にとって短期的な利益を追い求めるものではなく、環境や社会、経済がうまく調和する形で長期的に成長していくための戦略です。そして、それによって企業価値が高まり、新しい市場を生み出す機会も生まれてくるでしょう。
市場競争力と消費者ニーズの変化
サステナビリティへの取組は、企業にとって競争優位性を生む要素にもなり得ます。他社との差別化を図ることで、市場での存在感を高めることができ、その結果として売上や利益の向上も期待できます。特に若い世代は環境問題に対する意識が高く、エシカルファッションやサーキュラーファッションといったトレンドにも敏感で、自分たちの価値観に合うブランドを支持する傾向にあります。このような背景から、サステナビリティへのコミットメントはますます重要になっています。
長期的なコスト削減
リサイクル素材やオーガニック素材を使用することで、製造プロセスで発生する廃棄物が減少し、廃棄物処理にかかるコストが軽減されます。また、リサイクル素材の生産には、従来の原材料を採掘・加工する場合と比較して、エネルギー使用量が大幅に削減される場合があります。さらに、従来の原材料の価格は市場の変動によって大きく影響を受けますが、リサイクル素材やオーガニック素材の場合、安定供給の仕組みを構築すれば、価格変動の影響を受けにくくなり、長期的なコストの安定化が期待できます。
エコフレンドリーな素材について解説された以下の記事もぜひご覧ください。

エコフレンドリーな素材とは?モノづくりをおこなう上で企業が取り組むべき地球環境にやさしい選択
刻々と変化し、悪化の一途をたどっている地球環境を守るために、エコフレンドリーな取り組みから素材まで、ファッション・アパレル業界においてモノづくりをおこなう上で企業ができる選択、そして消費者として個人ができる取り組みをご紹介します。
関連記事
世界的な法規制の強化への対応
世界各国で環境関連の規制が強化されており、サステナブルなモノづくりをおこなうことは将来的な法的リスクを回避する手段となります。
EU:循環経済行動計画
EUでは「循環経済行動計画」に基づき、リサイクル素材の使用促進や廃棄物の削減、製品の耐久性向上が求められています。特にフランスでは、2022年に衣類廃棄禁止法が施行され、企業は売れ残った新品の衣料品を廃棄する代わりに寄付やリサイクルをおこなうことが義務付けられました。この法律に違反した場合は罰金が科されるため、企業はより責任ある行動が求められています。また、今後はDPP(デジタルプロダクトパスポート)が義務化される予定です。DPPは製品のライフサイクル全体に関する情報をデジタルで記録・共有する仕組みで、これによってサプライチェーンの透明性が向上し、リサイクルの効率化も進むと期待されています。
アメリカ(カリフォルニア州):衣料品労働者保護法
アメリカのカリフォルニア州では、アパレル製造における労働環境を改善するため、2022年に「衣料品労働者保護法」が施行されました。この法律は、縫製工場で働く労働者に対して最低賃金を支払うことを義務付けており、賃金搾取を防ぐ仕組みとなっています。また、ブランドはサプライチェーン全体において労働者の権利を守る責任が求められるため、透明性のある取引が企業ブランドの信頼性を維持するうえで非常に重要です。
オーストラリア:現代奴隷法
オーストラリアでは、「現代奴隷法」に基づき、大手企業はサプライチェーン内での強制労働や人身売買を含む人権侵害を起こさないための取組を公開する義務があります。企業は毎年監査報告を提出し、問題が発覚した場合には具体的な改善策を示さなければなりません。また、政府や自治体も人権侵害の撲滅に向けて被害者支援や教育活動に力を入れています。このような取組が進む中で、法的対応が遅れた企業は競争力を失うリスクがあるため、迅速かつ適切な対応が求められています。
これらの法規制により、アパレル企業が環境保護や労働者の権利保護、さらにはサプライチェーンの透明性を実現することが世界的な標準になりつつあります。各国で規制内容には違いがありますが、共通して企業は「持続可能なビジネスモデル」への転換が求められています。また、消費者や投資家の信頼を得るための戦略も非常に重要になっています。
有名アパレル企業が掲げる具体的なサステナブル目標と事例
カーボン・ニュートラルの先を行くバーバリーの「クライメート・ポジティブ」
バーバリー公式サイト(https://www.burberryplc.com/)より
「クライメート・ポジティブ」とは、事業活動や製品ライフサイクルにおいて排出される温室効果ガスを削減するだけでなく、それを上回る量の温室効果ガスを除去する取組を指します。この概念は、単に排出量と吸収量を相殺するカーボン・ニュートラルを達成することにとどまらず、より積極的に環境にプラスの影響を与えることを目指しています。
イギリス発の高級ファッションブランドであるバーバリーは、2040年までにクライメート・ポジティブを達成することを目標としており、そのために2030年までに自社を含むサプライチェーン全体における温室効果ガスの排出量を46%削減し、再生可能エネルギーの活用によってカーボン・ニュートラルを実現する取組を進めています。また、2020年に設立した「バーバリー再生基金」では、生態系の保護や生物多様性の回復などにも力を入れています。持続可能な農業や再生可能な土地管理をサプライチェーン全体に導入し、自然環境への積極的な貢献と業界全体のサステナビリティ推進を目指しています。
人と地球に優しいグッチのサステナブル戦略「Culture of Purpose」
グッチ公式サイト(https://www.gucci.com/)より
イタリア発のラグジュアリーファッションブランド、グッチのサステナビリティ戦略「Culture of Purpose」は、2015年に発表された10か年の計画で、環境保全、人権の尊重、新たなビジネスモデルの構築を主要な柱としています。この計画では、環境への負荷を減らすために、製品の生産過程で持続可能な素材を採用し、再生可能エネルギーの利用を拡大しています。また、2025年までには環境負荷を40%削減し、原材料の調達状況を追跡できるトレーサビリティを100%実現することを目指しています。実際、2015年から2020年末までに環境負荷を44%、温室効果ガス排出量を47%削減し、これらの目標を予定よりも4年早く達成しました。
さらに、人権擁護や多様性の推進にも注力しており、性別や国籍、背景に関わらず誰もが自由に自己表現できる社会を目指し、平等な働き方や雇用環境の改善にも取り組んでいます。「Culture of Purpose」は、単に環境保護にとどまらず、人々や社会全体にポジティブな影響を与えることを目指したプロジェクトなのです。
ブランド価値向上に成功したプラダの「Re-Nylon(リナイロン)」プロジェクト
プラダ公式サイト(https://www.prada.com/)より
イタリア発の高級ファッションブランド、プラダのRe-Nylon(リナイロン)は、持続可能性を重視したプラダの革新的な素材プロジェクトで、従来のナイロン素材をリサイクル素材に置き換える取組です。このコレクションでは、海洋プラスチックや漁網、繊維くずを再利用し、浄化して作られた再生ナイロン「ECONYL(エコニール)」が使用されています。再生ナイロンは従来のナイロンと同様に耐久性が高く、柔軟性や光沢感も保たれているため、高品質なラグジュアリー製品を作るのに適しています。
プラダのRe-Nylonは、ファッション業界全体にサステナビリティへの意識を高める影響も与えています。ブランドの象徴であるナイロンバッグをリサイクル素材に切り替えることで、環境問題への取組を明確に示し、ラグジュアリーファッションと持続可能性の両立を象徴する存在となりました。さらに2023年7月からは、Re-Nylonコレクションの売上の1%を、プラダ・グループとユネスコの政府間海洋学委員会(IOC)が推進する教育プログラム「Sea Beyond」の支援に充てています。「Sea Beyond」は、世界中の学生やプラダ従業員に海洋リテラシーを提供し、持続可能な行動を促すことで、環境保護と気候変動対策への意識向上に貢献しています。プラダは、エコフレンドリーな製品を求める消費者ニーズにも応えつつ、業界全体に循環型経済の重要性を伝える役割も果たしています。
世界で最もサステナブルな企業に選ばれたプーマの「FOREVER. BETTER.」
プーマ公式サイト(https://about.puma.com/)より
ドイツ発のスポーツ用品ブランドであるプーマは、「FOREVER. BETTER.」というスローガンを掲げ、サステナビリティおよび企業責任を果たすべく、環境的、社会的、経済的な影響をポジティブに変えることを目指しています。ファッション業界の専門紙「The Business of Fashion」が発表した「サステナビリティ・インデックス2022」では、プーマが1位を獲得しており、その中でも「水と化学物質」「労働者の権利」「透明性」の分野が特に強みとなっています。
「RE:SUEDE」プロジェクトでは、定番スニーカー「SUEDE」のデザインを元に、なめしスエードや生分解性TPE、麻など環境配慮型の素材を使って再設計し、エコフレンドリーなスニーカーを作り出しています。また、「RE:FIBRE」プロジェクトでは、テキスタイル廃棄物や使用済みポリエステル素材を主な原料として、新たなテキスタイルを生産します。これにより得られたリサイクル素材は品質を損なうことなく何度もリサイクルが可能で、持続可能な長期的解決策として注目されています。2024/25シーズンからは、35のクラブチームの公式レプリカユニフォームにもRE:FIBRE素材が採用されており、数百万枚のユニフォームがこの方法で生産されています。プーマは、2025年までにアパレルおよびアクセサリー製品におけるリサイクルポリエステルの使用率を75%に引き上げる目標を掲げており、RE:FIBREプロジェクトはその中心的な役割を担っています。環境負荷の削減と持続可能な製品設計を両立させることで、ファッション業界におけるサステナビリティの新たなスタンダードを提案しています。
アウトドア愛好家の心を掴んだTHE NORTH FACEの「GREEN IS GOOD」
ザ・ノース・フェイス公式サイト(https://www.thenorthface.com/)より
アウトドアブランドのTHE NORTH FACEは、2007年から「GREEN IS GOOD」というポリシーを掲げ、環境負荷の低減と資源循環に取り組んでいます。その中でも特に注目されている施策が「Renewedプログラム」です。このプログラムでは、使用済み製品を回収し、専門工場で修復・再生した後、手頃な価格で再販する仕組みを確立しています。再生された製品は高品質を保ちながら、新たに製造する際に必要な原材料やエネルギー消費を抑え、環境への負荷を大幅に軽減しています。
これらの取組を通じて、THE NORTH FACEは単なる環境配慮だけでなく、「繰り返し使う」「選んで使う」「大切に使う」という消費者意識の啓発にも注力しています。リサイクル素材やオーガニックコットンを使用した製品の開発や、CO₂由来のサステナブル素材の採用も進めており、2022年時点での再生ポリエステルの調達率が40%に達しました。このような自然を守るブランドの姿勢がアウトドア愛好家たちから支持され、Z世代やα世代の消費者にも高く評価されています。
サステナブル目標を達成するための革新的な技術とサービス
リサイクル技術と循環型素材
循環型のリサイクル技術を開発するEarth Protex
Earth Protex公式サイト(https://earthprotex.com/)より
Earth Protexは、サステナブルな循環型経済の実現を目指し、テキスタイル廃棄物や農業残渣を再利用して新しい繊維や高品質な素材に生まれ変わらせる革新的な技術を提供する企業です。主な技術に、使用済みの衣類や廃棄されたテキスタイルを科学的に分解してポリエステル繊維に再生する「Tex2Tex」、農業廃棄物をバイオファイナリー技術で再処理し繊維やバイオケミカルに変換する「Agrefinery」、リサイクル繊維とバージン素材を組み合わせて高性能なハイブリッド糸に再生する「Upspun」などがあります。
これらの技術を通じて、Earth Protexはテキスタイル廃棄物を新たな資源として活用し、従来のリニア型経済から循環型経済への転換をリードしています。また、リサイクルやバイオベース素材の導入によって、パタゴニアやナイキ、H&Mといったグローバルブランドとも連携し、持続可能なファッション産業の構築を支援しています。
循環型ファッションと企業ができるアプローチについては以下の記事が参考になります。

企業が知るべきサーキュラーファッションの全貌:環境保護から社会的意義まで、持続可能な未来を築くための新たなアプローチ
サーキュラーファッションは、持続可能な未来を築くための重要な概念として、ファッション業界で注目を集めています。今回は、サーキュラーファッションがもたらすポジティブな変革とその実現のために企業が取り組むべきステップについて詳しくご紹介します。
関連記事
素材からサステナブルに!パタゴニアが挑む「リジェネラティブ・オーガニック」農業
パタゴニア公式サイト(https://www.patagoniaprovisions.jp/)より
アメリカ発のアウトドア用品ブランドであるパタゴニアは、地球に優しい農業を広めるために「リジェネラティブ・オーガニック:再生型有機農業」に取り組んでいます。この方法は、土壌を再生しながら、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を土の中に閉じ込める仕組みです。化学肥料や農薬を使わず、自然環境や動物、労働者にも配慮することで、持続可能な素材を生み出します。パタゴニアは、このように育てたオーガニックコットンを製品に使用し、環境への負担を軽減しています。
また、リジェネラティブ・オーガニック農業を通じて生産されたウールを活用することで、環境負荷を軽減しながら高品質な製品を提供しています。この取組では、生物多様性の促進や動物福祉の向上を重視しており、羊の放牧を適切に管理することで土壌の栄養を高めるとともに、生態系全体の健全性を保っています。化学肥料や農薬を使わずに生産されたウールは、カーボンフットプリント(※)を低減し、製品の持続可能性を向上させています。
パタゴニアはこの農法を通じて、農業の未来に対する新しいモデルを提案しています。リジェネラティブ・オーガニック農業を推進する農家やコミュニティを支援し、その実践例を消費者や他のブランドに広めることで、業界全体での変革を促進しています。パタゴニアの挑戦は、服作りを通じて地球を守り、自然とともに生きる大切さを訴えています。
※カーボンフットプリント:製品のライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガスを測定したものです。地球温暖化への影響を「見える化」し、温室効果ガス削減への具体的な行動を促すための重要な指標となっています。
デジタル技術による生産の最適化
データ活用でサステナブルな仕組みを作るFEDIエコシステム
NTTデータ公式サイト(https://www.nttdata.com/)より
NTTデータが提供するFEDI(Federated Ecosystem for Data Integration)は、アナログでやり取りされている一連の業務、つまり受発注管理から輸入通関業務、請求・決済に至るまでをデジタル化し、高精度な需要予測を実現する仕組みです。この需要予測に基づいた適時・適量生産を支援し、ファッション業界の生産プロセス全体におけるトレーサビリティを可視化することで、サプライチェーンの透明性を高め、SDGs達成に寄与することを目指しています。
従来のデータ管理システムには、データが分散しているために非効率であったり、プライバシーやセキュリティに関する懸念があったり、異業種間でのデータ連携が難しいといった課題がありました。これらの問題を解決するために、NTTデータは複数の繊維商社やシタテル株式会社と協力し、貿易プラットフォーム「TradeWaltz」や請求決済連携の「TetraBRiDGE」を活用して業界を横断する効率的な仕組みを構築しました。この取組は「FEDIエコシステム」として提供されており、ファッション業界のグリーントランスフォーメーション(※)を支援しています。EUの制度であるデジタル製品パスポート(DPP)に対応し、ファッション業界のグリーントランスフォーメーション(GX)を実現します。
※グリーントランスフォーメーション:社会や経済の仕組みを根本的に見直し、環境への負荷を最小限に抑えながら、持続可能な成長を実現するための取組を指します。具体的には、脱炭素化を目指して、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の活用、新しいビジネスモデルの構築など、環境に配慮した社会変革を推進します。
ファッション・アパレルの企画から生産におけるリードタイムを短縮した、横編機メーカー島精機製作所のトータルファッションシステム
島精機製作所公式サイト(https://www.shimaseiki.co.jp/)より
島精機製作所が提供する「SDS®-ONE APEXシリーズ」は、ファッション・アパレル業界において企画から生産までのリードタイムを大幅に短縮できるデザインシステムです。このシステムは、高精度なデザインツールと3Dバーチャルサンプリング機能を備えており、物理的なサンプル作成の手間やコストを削減します。また、デザインの修正やシミュレーションを画面上で瞬時に確認できるため、効率的な作業が可能です。
また、ニットのデザインデータは生産工程へとシームレスに連携できるため、業務効率が向上し、小ロットや多品種少量生産にも柔軟に対応できます。これによって過剰在庫のリスクを抑えつつ、市場のトレンド変化にも迅速に対応できるという大きな強みがあります。例えばECサイトなどで予約販売をすることで需要予測ができ、適正在庫を確保することも可能です。
さらに島精機製作所のデザインシステムはデジタル技術を活用してデザイナーと生産現場を結びつけ、サステナブルかつ効率的なモノづくりの実現に貢献しています。これらを総称したトータルファッションシステムは、ファッション業界の競争力を大きく引き上げる革新的なソリューションと言えるでしょう。
なお、SDS®-ONE APEXシリーズには、サブスクリプションサービスの「APEXFiz®」もあります。

リアルなバーチャルサンプルはこれで決まり!企画から生産、ECへの活用まで幅広く役立つデザインソフトAPEXFiz®とは?
ファッション・アパレルの商品を企画する際、どんなソフトを使っていますか? CLO3D、Browzwear、Optitexをはじめ、おなじみAdobeなど、さまざまなソフトがありますよね。今回は、企画から生産、ECへの活用まで幅広く役立つデザインソフトAPEXFiz®をご紹介します。
関連記事
無駄をなくす革新的な製造技術
究極のサステナブルファッションを形にしたものとして、ホールガーメント®ニットが挙げられます。ホールガーメント®は、島精機製作所が開発した無縫製のニット製品で、サステナブルファッションを実現するための革新的な技術です。従来のニットウェアは、編み地を裁断、または必要なパーツを編み、縫製するというプロセスでしたが、これに対しホールガーメント®は縫製なしで、一着丸ごと立体的に編み上げることができるのが特徴です。これにより生産過程での廃棄ロスを最小限に抑えることが可能になります。
島精機製作所公式サイト(https://www.shimaseiki.co.jp/wholegarment/)より
さらに、縫い目がないことで着心地もよく、フィット感に優れた製品を提供できます。生産工程がシンプルになることでサプライチェーンの効率化や輸送コストの削減にも繋がり、カーボンフットプリントの低減にも寄与します。
ホールガーメント®は、ファッション業界における製品廃棄と過剰生産といった根深い問題への解決策の1つでもあります。リードタイムが短いためオンデマンド生産で適時適量生産が可能となり、売れ残りや機会損失を防ぐことができます。環境負荷を大幅に削減しながら、消費者には快適で高品質な製品を届けることで、持続可能なモノづくりと市場のニーズを両立させる、サステナブルファッションにおける新たなスタンダードを築く革新的な技術と言えるでしょう。
ファッション業界におけるサステナブルについて解説された以下の記事も、ぜひご覧ください。

サステナブルファッションとは? 業界の問題から企業の取り組み、個人ができることまで全部紹介
ファッション・アパレル業界における「サステナブルファッション」の取り組みについてご紹介します。地球環境や自然環境を守り、これからも継続的に発展していける社会の実現を目指すために、今、私たち全員に必要な活動です。
関連記事
循環型ビジネスモデルと消費者参加型の取組
前章で紹介した革新的なデジタル技術や製造技術は、廃棄ロスの削減や製品ライフサイクルの最適化を実現し、サステナブルな生産基盤を築くことに貢献しています。これらの技術を基盤に、資源を循環させる新たなビジネスモデルが登場しています。本章では、消費者とともに地球環境を守るための循環型経済への取組についてご紹介します。
循環型オンラインショッピングモール「BLUEKNIT」が実現する「循環させる未来」
BLUEKNIT公式サイト(https://blueknit.jp/pages/aboutus)より
島精機製作所が運営するBLUEKNIT(ブルーニット)は、地球環境への配慮、心身に優しい製品の提供、生産者の支援、そしてエシカルな社会の実現という4つの観点をもとに、“資源を循環させる”ことに取り組むプラットフォームとして誕生しました。BLUEKNIT storeでは、サステナブルな素材で作られたニット製品を幅広く取り扱っています。不要になった製品は島精機製作所が買い戻し、必要に応じてリペア・リセールします。リセールできない製品は、素材に適したリサイクル方法を選択し、再資源化をおこないます。
BLUEKNITは、廃棄物の削減や資源の有効活用、消費者との共創を通じて、単なる製品のリサイクルにとどまらず、製品のライフサイクル全体を見直すことで、「捨てない未来」を形にする持続可能なモノづくりを実現しています。
アーバンリサーチのSDGs基本方針「3C」
アーバンリサーチ公式サイト(https://urban-research.co.jp/)より
日本発のセレクトショップ型ファッションブランド、アーバンリサーチのSDGs基本方針「3C」は、Clothing Innovation・Clean Earth・Community Buildingの3つを柱にしています。
Clothing Innovation(衣料資源の有効活用)
アーバンリサーチはサステナブル素材の活用や生産量の適正化、アップサイクルの推進など、アパレル企業としての責任を果たす取組をおこなっています。特に注目されるのは、2022年5月から始まった、「古着バトン」というプロジェクトです。このプロジェクトでは不要になった服を回収して再販する仕組みが導入されています。無料回収BOXが増える中、同社はあえてキットを購入してもらい回収する仕組みをとっています。アパレル産業の大量生産・大量消費というこれまでの仕組みに終止符を打ち、消費者にも一緒に行動してほしいという願いが込められています。
Clean Earth(地球環境負荷の軽減)
アーバンリサーチは地球環境への負荷を減らすために、再生可能エネルギーの活用を進めています。店舗やオフィス運営において、温室効果ガスの排出量削減を目指し、省エネルギー化やエコ素材を使用した製品開発に力をいれています。また、廃棄物のリサイクル率向上や、衣料廃棄物の削減に向けた取組も重点的に進めており、従業員の環境意識向上を図るためのSDGsに関する勉強会も実施しています。
Community Building(コミュニティの形成)
地域社会とのつながりを深め、持続可能な社会を築くため、アーバンリサーチは地域の特産品や伝統技術を活かした商品企画や販売をおこない、地元経済の活性化に寄与しています。また、自治体やNPO、異業種企業とのパートナーシップを通じて、地域社会が直面する課題解決を目指すプロジェクトも展開しています。
サステナビリティ戦略を新たなビジネスチャンスに!地球を救う、次世代のファッションへの道筋
サステナブルファッションは、単なるトレンドではなく、これからのファッション・アパレル業界において必要不可欠な要素となっています。世界各国での法規制が進む中、企業は環境保護だけでなく、透明性と倫理性を両立させることが求められています。バーバリーの「クライメート・ポジティブ」やプラダの「リジェネラティブ・オーガニック」、島精機製作所のデジタル技術といった革新的な取組は、環境負荷の削減とビジネスの成長を両立させるモデルケースとして注目されています。
今後のファッション業界では、「つくる人」「つかう人」「支える技術」が一体となり、資源を循環させながら地球環境を守り、新たな価値を生み出す時代へと進んでいくでしょう。この変革は、新たなビジネスチャンスでもあります。私たち一人ひとりの選択が未来のサステナブルファッションを支える力となることを忘れずに、日々の暮らしを見つめ直してみましょう。
wearwareはファッションデザインのデジタル化を応援しています。
次回の更新もお楽しみに!