皆さん、こんにちは。ファッション・アパレル業界の未来を救うお役立ちサイトwearware(ウェアウェア)です。
急速にデジタル化が進んでいるファッション、アパレル業界において、消費者である私たちにとっても商品を購入する方法が進化しています。すでにECサイトでのオンラインショッピングに慣れている私たちですが、さらに一歩進んだショッピングを体験してみませんか?それを可能にしてくれるのが、バーチャルショップなのです。
今回は、バーチャルショップとは何か?また、そのメリットや事例、そしてバーチャルショップの作成方法についても紹介していきます。
目次
バーチャルショップとは、3DやVRの技術を使用してWeb上に作られた仮想店舗のことです。バーチャル店舗とも呼ばれていますね。バーチャルショッピングはECサイトでのお買い物とも違う新しい体験であり、ユーザーは、実際のお店で買い物をするときのように店舗内を歩いたり、商品を見たりする感覚を味わうことができるのです。
バーチャルショップの効果とメリット
新規顧客の獲得
物理的に店舗に行く必要がないため、地域、国を超えて幅広い顧客層にアプローチすることが可能です。既存のECサイトとは異なる体験を提供できるため、特に若い世代へのマーケティング施策としても注目されています。
ECサイトよりブランドの世界観を表現可能
実際の店舗では、ブランドの世界観を表現するために空間演出をおこなっているところが多くあります。3Dの技術やエフェクトを使用すると、2次元であるECサイトとは異なり、実際のお店と同じように什器や商品の陳列、インテリアなどを設置するといった演出ができるため、ブランドの世界観をユーザーに伝えることができます。
ECサイトよりCVR※が高く、ユーザーデータの分析も可能
実店舗に近い雰囲気や演出を提供できるため、ユーザーの購買意欲を高めることができます。また、ユーザーの行動や好みを分析し、マーケティングや商品開発に活用できるため、パーソナライズされた商品やサービスを提案することで、顧客満足度が高まります。
※ CVR:コンバージョン率と呼ばれ、バーチャルショップの訪問者のうち、商品購入や資料請求などの成果に至った割合を表します。
実店舗よりランニングコストが抑えられる
実店舗に必要な家賃や光熱費などの固定費を大幅に削減できます。また、デジタルツールを活用することにより、人件費などの運営コストも削減可能です。
バーチャルショップのデメリット
顧客との直接的な関わりが少なくなる
お客様との対面での接触がないため、オンライン上で顧客体験を充実させる工夫や施策が必要です。
競争の激化に伴い、差別化の重要性が高まる
バーチャルショップを含むオンラインショッピングの普及により、市場の競争が激しくなるため、オリジナリティの確保や差別化が重要になります。
IT技術への依存のリスク
システム障害や不具合など技術的なリスクが発生する可能性があります。また、個人情報の保護、セキュリティ問題への対応も必要です。
このように、バーチャルショップは多くの効果、メリットがある一方で、デメリットも存在します。両方を十分に理解し、効果的な施策、対策を講じることにより、バーチャルショップを通じてユーザーに幅広いショッピング体験を提供することができます。
バーチャルショップの認知度
こちらは、バーチャルショップの認知度と利用状況について、日本国内の20~40代の人々を対象におこなった調査の結果です。(2023年2月のNTTデータ経営研究所/NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション「バーチャルショップに関する意識調査」より)バーチャルショップを知っている人は約3割に留まり、認知度が高いとは言えませんが、認知している人の約半数が「利用したことがある」との回答でした。
購入、または購入を検討した商品は、「衣類・ファッション・装飾品」が最も多く、次いで「食品・飲料・生活用品」、他には「家具・インテリア・家電」が高くなっています。
すでに利用したことがあるユーザーの利用頻度は、約7割が月に1度以上と高く、バーチャルショッピングという体験にポジティブな印象を持っており、9割以上の人が今後も引き続き利用したいと回答しています。
今後の課題としては、認知していない人に利便性やメリットを訴求していく必要があることと、ユーザーと対面できない状況で接客の品質をどのように改善していくかが、重要なポイントであると考えられます。
アパレル・ファッション業界でバーチャルショップを展開している企業、ブランド
バーバリー
バーバリーバーチャルポップアップストア(https://burberry-ginza.com/)より
ウォークスルー機能により店内を歩いて見ることができます。また、見たい階へジャンプしたり、お目当ての商品の◎アイコンをクリックするとその場所に瞬時に移動し、ECサイトに遷移して商品の詳細を確認したり、購入することが可能です。
洋服の青山
AOYAMA バーチャルショップ(https://www.y-aoyama.jp/campaign/newstandard_vrshop/)より
メンズとレディースのブランド、ACTIBIZとANCHOR WOMANのバーチャルショップがラインアップされています。自宅に居ながらお店の雰囲気や商品を体験することができます。
アシックス
アシックスバーチャルストア(https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/vr_store)より
最新の360°VR撮影技術により、アシックスフラッグシップストアをバーチャル空間上に表現。気になる商品をクリックすると、詳細やオンラインストアへのリンクが表示されます。「アシックス」の世界観を新体験することができます。
WWS(ワークウェアスーツ)
WWSバーチャルストア(https://www.workwearsuit.com/contents/virtualstore/)より
高機能、かつシンプルなデザインを追求したスーツ型作業着を開発、製造、販売しているアパレルブランド。実際に人が着用した写真を見られるためイメージが湧きやすく、また、オンライン接客にも対応しているため、商品のサイズ感やコーディネートなどを販売員に相談しながら買い物することができます。
ワコール
ワコール Yueバーチャルショップ(https://www.yue-japan.com/virtual-shop/)より
陳列されている商品は実物を撮影したものではなく、グラフィックソフトウェアや3Dモデリングソフトウェアで作成したデジタルデータです。什器などの内装もデジタルデータで作成されており、まさにバーチャルショップと呼べる一店です。
VR-knit.com™
SHIMA SEIKI VR-knit.comサイト(https://www.xrdoor.xreality.au.com/shop/shimaseiki/vr-knit_jp/)より
3Dバーチャルサンプルを作成できるデザインシステム SDS®-ONE APEXシリーズを開発、製造、販売している繊維機械メーカーの株式会社島精機製作所が、オリジナルニットサンプルを展示しているバーチャルショールーム。こちらも製品はすべてデジタルのバーチャルサンプルです。拡大して生地の素材感を確認することや、スマートフォンでは AR(拡張現実)技術により目の前に商品を表示させて360°あらゆる角度から見ることができます。店頭で商品を見るのともECサイトで写真や動画を見るのとも異なる新たな感覚の体験を提供することが可能になります。wearwareの別の記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
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BEAMS
BEAMSプレスリリース(https://www.beams.co.jp/company/pressrelease/detail/684)より
WEBブラウザで閲覧する以外に、VR機器を使用してアクセスすることもできるバーチャルショップです。ユーザーはVRゴーグルなどの機器を使用して仮想空間に入り、自由に商品を見ることができます。VR機器を持っていなくても気軽に仮想空間でのショッピングを体験できるバーチャル体験会場も設置されました。こちらの動画にて、ショップの外観や内装、またバーチャル接客や試着の様子などが紹介されています。
バーチャルショップの作り方
さて、いくつかのバーチャルショップを紹介しましたが、実際にバーチャルショップを開設するには、店舗の設計をして、3Dデータを制作、ユーザーが使えるようにショップ開設(オンライン上での公開)というステップが必要です。作成方法は大きく分けて、「実在する店舗をバーチャルショップ化する」、もしくは「実在しない店舗を3Dで設計して、一から空間を作成する」の2種類に分けられます。
実在する店舗をバーチャルショップ化する
実店舗をバーチャルショップに変換する場合、主に「360度カメラによる撮影」と「ジオメトリック(幾何学的)撮影」の2つの方法があります。
360度カメラによる撮影
1点撮影場所を設定し、そこを中心として周囲360度を写真撮影します。視点を変えたい場合は、カメラを移動して別視点から撮影する必要があります。これはあくまでも写真を撮影したものを中心から360度すべての方向で見るため、空間の奥行きや高さなど、3Dの立体感を完全に再現するのは難しい場合がありますが、360度カメラ撮影は比較的手軽におこなえるというメリットがあります。
参考:RICOH THETA公式サイト(https://theta360.com/ja/contents/lb_store/)
ジオメトリック撮影
店舗の棚や服などすべて立体的に3Dスキャンをおこない、よりリアルな3Dモデルを作成します。前章で紹介したバーバリー、アシックス、WWS(ワークウェアスーツ)のバーチャルショップがこちらにあたります。ジオメトリック撮影ではよりリアルな3D空間を作成できますが、高価な機材や専門的な知識が必要になることが多いです。最近ではiPhone 12 Pro、iPhone 13 Proなど、LiDARセンサーを搭載したモデルでLiDARテクノロジーとフォトグラメトリ技術を利用して3Dスキャンができるアプリも登場していますので、今後手軽になってくることが予想されます。
Nike Store Milano:Matterport公式サイト(https://go.matterport.com/PPC-JP)より
このように、実店舗をバーチャルショップに変換する場合は、いずれの方法にしても下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 3Dモデルを一から制作するのに比べて時間短縮とコスト削減が可能です。
- 実店舗をそのまま再現できるためリアルな空気感を味わうことができ、ウォークスルー機能でお店の中を歩いているようにスムーズに移動できます。
デメリット
- 商品を入れ替える場合、実際の店舗で入れ替えをおこない、撮影や3Dスキャンをし直す必要があります。
実在しない店舗を3Dで設計して、一から空間を作る
実在しない店舗の場合は、床や窓、柱といった空間をはじめ、そこに配置する棚などの什器をすべて3Dでモデリングする必要があります。3ds Max、Blenderなど3DCGソフトウェアを使用して3Dモデルを制作します。前章のワコールのバーチャルショップはこの方法で作成されています。最近では、3Dデータ販売サイトも増えてきているので、データを購入、ダウンロードして活用することも可能です。
3D MODEL JAPAN公式サイト(https://3dmj.info/)より
メリット
- 実際のお店がなくてもバーチャルショップを制作できます。
- エフェクト効果などを使用して、実際の店舗にはない空間の演出が可能です。
- 実在店舗では取り扱うことのできない物理的に大きなサイズの商品や、多種多様なバリエーションを紹介したり、発売前の試作品を展示することができます。
デメリット
- 店舗の設計プロセスが必要になり、3Dスキャナで実際の店舗を撮影するのに比べて時間とコストを要します。
- 実店舗を3Dスキャンした場合に比べてリアルさに欠ける場合があります。
以上、2種類のデータ作成についてご紹介しましたが、どちらの場合も、データ作成後はオンライン上にアップして、PCやスマートフォンで閲覧できるようになります。3Dデータの利用には専用ソフトが必要であるほか、データ容量が大きくなることからハイスペックなPCが必要であるなど、まだ一般的とは言えませんが、最近ではバーチャルショップの制作に特化したサービスなど手軽に使えるものも増えてきました。
今後多くのブランドがバーチャルショップを開設して、新たな販路として利用する日が来るかもしません。
いかがでしたか?バーチャルショップは、ショッピングの未来であり、私たちにユニーク、かつ魅力的な体験を提供してくれると感じていただけたのではないでしょうか?これをきっかけに、バーチャルショップを通じて、新たなビジネスチャンスや販路開拓に挑戦してみてください!
wearwareはファッションデザインのデジタル化を応援しています。
次回の更新もお楽しみに!